麻布大学は、東日本大震災の被災地に遺棄されていた犬たちが強いストレスを経験していたことを明らかにした。同成果は同大獣医学部動物応用科学科の茂木一孝 准教授、永澤美保 特任助教、菊水健史 教授らの研究チームによるもので、2012年10月11日付の英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

同大獣医学部動物応用科学科では、動物トレーニング実習において、飼い主から遺棄された犬を保護施設から引き取り、トレーニングを施して里親に譲渡する活動を行ってきた。

2011年度からは、3月11日の震災発生を受け、被災地から犬をできるだけ多く受け入れ、新しい家庭へと譲渡する試みを進めてきており、引き取った当初は心身共に震災の影響を受けていた犬たちも、適切な管理を介することで健康を取り戻し、その多くが里親に譲渡されるまでに回復したという。

今回の研究ではその引取り、トレーニング、里親への譲渡という過程で、被災地から引き取った犬と、震災前に神奈川県の保護施設から引き取った犬のトレーニング実習期間中における、ストレスの指標である尿中のコルチゾール値と行動特性を調べた。

その結果、被災地から引き取った犬では、震災前に引き取った犬よりも尿中コルチゾール値が5から10倍高く、また学習能力や愛着行動が低下していることが判明した。これを受けて研究チームでは、被災地からの犬は非常に強いストレスを経験していたことが明らかになったと結論付けたという。

被災地より引き取られてトレーニングを受けている犬の様子(出所:麻布大Webサイト)