インプレスR&Dのシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所は9月25日、電子コミック市場を多角的に分析したレポート「電子コミックビジネス調査報告書2012」の販売を27日から開始すると発表した。あわせて、レポートの一部が公開されている。

レポートでは、電子書籍販売ストアや出版社への取材、ユーザーへのアンケート調査などをまとめ、電子コミック市場の概要や動向、ユーザーの利用実態などの分析が行われている。

レポートによると、日本の2011年度の電子コミック市場規模は推定514億円で、前年度より10億円減少している。これまで電子コミック市場は順調に右肩上がりを続けてきたが、今回はじめて前年を下回る結果となった。市場規模減少の要因として、フィーチャーフォンからスマートフォンへのデジタルコンテンツの移行が順調に進んでいないことや、ケータイ向け電子書籍市場の落ち込みが挙げられている。

しかし今後は、スマートフォンやタブレット端末の普及とともに電子書籍がマルチデバイスで閲覧できる環境が広まることや、電子化の遅れていた少年マンガの人気作品の電子化が進んでコンテンツが拡充されることにより、電子コミックの市場シェアはさらに拡大する見込みだという。Amazon Kindleの日本上陸なども市場の活性要因として期待されている。

電子コミック市場規模の推移(発表資料より)

有料電子コミック利用者に多く購読されている電子コミックのジャンルは、1位が「少年マンガ誌系」で2位が「青年マンガ誌系」という結果になっており、その他のジャンルは最高でも2割程度におさまっている。なお、紙媒体(単行本)の購読率では、少年マンガ誌系より青年マンガ誌系の比率が高く、この一因は少年マンガの電子化の遅れにあると見られている。

購入しているコミックのジャンル(発表資料より)

このほか、有料電子コミック利用者に紙媒体のコミックの購入量の変化について尋ねた質問では、「変わらない」という回答が61.5%で最も多くなっている。また、「紙媒体のコミックはもともと買っていない」と答えた人も6.3%おり、電子コミックが新たなユーザー層を開拓していることがわかる。

電子コミックの購入頻度別に見ると、購入頻度が高いユーザーほど紙のコミックの購入量が増えており、週に1回以上電子コミックを購入する層では、紙のコミックの購入が「増えた」という回答が36.4%、「減った」という回答が26.6%で、電子コミックの購入が紙のコミックの購入促進につながるケースもあることがわかる。

電子コミックの購入頻度別 電子コミック購入後の紙のコミックの購入量の変化(発表資料より)

販売されるレポートは全124ページで、PDFで閲覧できるCD版が6万800円、CD+冊子版が7万1400円となっている。