10月26日の発売日を前に、MicrosoftがWindows 8をPCメーカーに卸す際のOEM価格が話題になっている。現在報じられている内容によれば、Windows 8の無印とProともにWindows 7時代よりも低めのリストプライスが設定されており、本体の販売価格引き下げに幾分か寄与することになるとみられる。一方でWindows RTに関しては厳しい情報が伝えられており、競合タブレットと比較しても価格面で苦戦を強いられる可能性が指摘されている。

Windows 8はWindows 7よりも低価格に

この件を報じているのはZDNetだ。執筆者のMary Jo Foley氏の情報源によれば、無印とProの2種類があるWindows 8のSKUのうち、前者が100ドル、後者がさらに20~40ドルの上乗せという価格でMicrosoftからPCメーカーに対して打診が行われているという。もっともこの価格はそこからの値引きを前提としてリストプライスの可能性があり、実際にはより低価格でのライセンス販売が行われているかもしれない。

なお同氏によれば、米国での64ビット版Windows 7 Home Premiumの価格は当初129ドルで、後に90ドルに値下げが行われたという。64ビット版Windows 7 Professionalについては当初180ドルで、現在は130ドルの水準だとのこと。もっとも、筆者自身もWindows 7については、メーカーによってはこれよりも低いOEM価格が提示されているという話を聞いているため、あくまで目安と考えるべきかもしれない。いずれにせよ、リストプライスの時点でWindows 7時代よりもOEM価格が引き下げられているということは、それだけPCメーカー各社にとって競争力を維持する原動力になる可能性を秘めている。

Windows RTで利益を出すのはかなり高いハードル

一方で、これ以上に大きな話題となっているのはWindows RTのほうだ。同じくZDNetが、ASUSからのリーク情報として同社がリリースを計画しているWindows 8/RTタブレットの価格を紹介したものによれば、同社2画面コンバーチブルPCの「Taichi」が1,299ドル、Windows 8タブレットの「Vivo Tab」が799ドル、Windows RTタブレットの「Vivo Tab RT」が599ドルとなっている。ストレージ容量が違うため一概に比較できないが、競合となるAppleのiPadと比較しても、後発製品としてはやや高めの印象を受ける。

8月にWindows 8/RTタブレットの価格が話題になったとき、Lenovo幹部はBloombergのインタビューに対して、Windows RTタブレットは200~300ドル、Windows 8タブレットは600~700ドルの価格レンジになると説明していた。ASUSの場合、Windows 8タブレットについてはおおよそこの価格レンジに入るものの、Windows RTタブレットについては明らかにそれより高めの価格設定になっている。

またSeattle Timesが米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏のインタビューとして伝えたところによれば、Microsoftは同社製タブレットのSurfaceを300~800ドルの価格レンジで提供する計画があるという。800ドルがWindows 8 Proを搭載したSurface Proの価格だとするならば、Windows RTを搭載したSurface RTの価格は300ドル前後ということになる。以前にはSurface RTが199ドルになるという噂もあったが、これはおおよそ200~300ドルの価格レンジにあるというLenovoのインタビューの内容に合致した価格だ。

だが200ドルという価格は、既存のARM搭載AndroidタブレットやiPadの部品原価(BOM)を考えれば、PCメーカーがほとんど利益を出せない水準だ。これにさらにMicrosoftからのWindows RTのライセンス料が加わるとすると(実際の価格は不明だがWindows 8と同じ水準として)、300ドルでも利益を出すのはかなり厳しいと思われる。Microsoftについては、Surface RTを300ドルで販売したとしてもWindows Storeでのアプリ・コンテンツ販売から利益を得られるわけで、これがないPCメーカーにとってはかなり厳しい条件だ。Lenovoの発言とは異なるものの、ASUSが「Vivo Tab RT」を599ドルで販売することになった場合、こうした事情から価格を引き上げざるを得なかったものとみられる。