パナソニックは、2010年に開発し、「手づたえ教示」による熟練作業の自動化を実現したパラレルリンクロボットの外販を2012年9月10日より開始すると発表した。

セル生産の浸透により、組立工程では人による作業が一般的だが、品質バラつきや作業効率の向上などが経営課題となっており、ロボットを利用する場合に煩雑な作業となる教示の簡素化、時間短縮への要望が高くなっている。

一方、ロボットで作業を自動化するためには、専門的な組立手順を記憶させることが必要だ。また、ライフサイクルが短い商品では短期間での生産立上げが要求されており、複雑で多彩な作業を伴う場合は、ロボットへの組立手順の入力作業などが煩雑となり、作業開始までに長時間を要するという点なども課題だ。ロボットを利用する場合に、煩雑な作業となる教示の簡素化、時間短縮への要望が高くなっているのである。

さらに、ものづくりの最大拠点である中国において、近年になって人件費が高騰しており、コスト上昇や頻繁な人材流出に伴い、人員確保が困難な状況になってきており、今後、生産現場の自動化の増加が予想されている。

同製品は、ロボットそのものに簡単かつ安全に手づたえで教示することができるのが特徴だ。そのため、製造現場のオペレータでも手間をかけずに、作業のコツを教示することが可能となり、作業バラつきを抑制することが可能となるというわけだ。

ちなみに手づたえで教示とは、人の手により、直接エンドエフェクタ(対象物をつかむハンドが取り付くアーム先端部)を動かして、動作・技能を伝えて記憶させる作業のことで、作業的に直感的であることから、誰でも手間なく安全・簡単に作業を指示することが可能である。そして熟練者のノウハウを数値化して活用できる点もポイントだ。

パラレルリンクロボットのアームは6軸協調制御型で、6自由度(アームを動かすことのできる方向の数)で柔軟な姿勢を取ることができる。ロボット本体の構成は簡素だが、高度な制御技術により、6つのモータを同時にコントロールし、目的の位置のものをつかんだり、姿勢を変更したりすることが可能だ。

作業空間内で、どのような作業にも対応するためには、6自由度が必要だが、このロボットは6つのモータで6自由度を表現できるため、自由な姿勢が表現でき、人作業のような複雑な姿勢にも追従する。また、アームやプレートなどの可動部は軽量な構造のため、高速で繊細な動作を可能とする。パラレルリンクロボットの全体構成図は以下の通りだ。

  • 装置名:パラレルリンクロボット
  • 型番:AP-3310A0001
  • 教示方法:ポイント教示、手づたえ教示
  • 外形寸法:ロボット本体:幅635mm×奥行642mm×高さ604mm(設置時)/制御BOX:幅400mm×奥行550mm×高さ250mm/コンピュータ:幅136×奥行380×高さ329mm
  • 質量:ロボット本体60kg
  • 制御BOX:20kg
  • コンピュータ:10kg
  • 推奨可動範囲:直径φ400mm、高さ150mm(水平移動時)
  • 傾斜・回転角度:±30°(位置に依存)
  • 繰返し位置決め精度:±0.02mm
  • 最大許容可搬重量:1.5kg
  • 電源:制御BOX:単相AC200~230V±10%50/60Hz6A/コンピュータ:単相AC90~240V50/60Hz450VA
  • 用途:挿入作業、貼付作業、配線作業塗布作業など
  • 特許:国内5件、海外1件

同社は、今回のパラレルリンクロボットの使い勝手を飛躍的に高めることで、製造現場の生産性向上およびコスト削減に貢献していくとしている。