リコーは、皮膚のかゆみやかぶれなどのアレルギー性皮膚炎を引き起こす「皮膚感さ性」を大幅に低減した光硬化型(UV)インクジェットインクの開発に成功した。

光硬化型インクジェットインクは光を照射すると瞬時に硬化することから、速乾性が求められる用途や染み込みにくい素材に印刷する用途などに有効で、プラスチックへの印刷など身近なところで利用され、近年では3Dプリンタ用の素材としても使用されている。しかし、この種のインクは光照射前の液体状態において必ずしも人体に対する影響について十分配慮されたものばかりではなく、特に皮膚感さ性については改善が望まれている。

同社が開発した新インクの最大の特徴として、インクの原材料として歯科治療にも用いられるメタクリル酸エステルを使用することで、皮膚感さ性物質を排除したことが挙げられる。一般のメタクリル酸エステルは光照射時の硬化反応性に乏しいものが多い中、良好な硬化反応性を有する特定の分子構造を見いだし、また、加える添加剤を工夫することで従来と同程度のインク吐出特性と硬化反応性を実現した。

クロスカット評価。日本工業標準規格(JISK5600-5-6)では、硬化済みのインク層に対して基材にまで達するようにカッターで切り込みをいれて碁盤目状のマス目を作りその上から粘着テープを貼って勢いよくはがし、作成したマス目のうち粘着テープ側に移行せず残存したマス目を計数してその数が多いほど密着性が良好と判断する。なお、今回開発した光硬化型インクジェットインクでは、難接着性基材として代表的なポリプロピレンフィルム(表面処理あり)に対して、100マス中100マス残存という結果を得ているという(資料:リコーのWeb)

また、同インクは一般に利用されているラジカル重合方式を採用しているため、安価な原材料を使用できることからインクとしても低コスト化を図ることができる。また、原理的に酸やアルカリが発生しないため、インクヘッドやプリンタ部品において耐酸性などの制約がなく、部材選定の自由度も高くなるという。

そして、ラジカル重合方式の課題であった、印刷対象素材に対する密着性も添加剤の工夫で改善しており、代表的な難接着性材料であるポリプロピレンフィルムに対しても十分な密着性が得られることが確認できたとのこと。

同社は、この技術について9月9日~13日にカナダ・ケベックシティで開催される国際会議 "NIP28(28th International Conference on Digital Printing Technologies)" で発表する。