医薬基盤研究所などの研究チームは、同研究所霊長類医科学研究センターで飼育されているカニクイザルの全ゲノムの解読を行ったことを発表した。同成果は同研究所の坂手龍一 研究員(難病資源研究室)のほか、京都大学霊長類研究所、国立遺伝学研究所らの研究者によるもので、「Genome Biology」に掲載された。
カニクイザルは、インドから東南アジアにかけて生息し、生息域の重なるアカゲザルとの交配などにより、遺伝的に多様であることが知られており、糖尿病、心疾患、黄斑変性症などのヒト疾患のモデル動物として広く利用されている。今回、研究チームは、産地による遺伝的差異を解明して疾患モデル動物としてのカニクイザルの価値を高めるため、マレーシア産カニクイザル(25歳オス)の全ゲノムの解読を行った。
Life Technologiesの次世代シークエンサ「SOLiD 3 Plus」で得たDNA断片配列を、公共データベースに登録されているインド産アカゲザルのゲノム配列にマッピングしたところ、平均41.5倍の被覆率の高品質なゲノム配列を得ることができ、約970万個の1塩基変異(SNV)が見つかったという。
すでに解読されていたベトナム産カニクイザル、中国産アカゲザル、インド産アカゲザルのゲノムとの比較により、カニクイザルに特異的なSNVを同定。これらのSNVには、薬剤代謝遺伝子や免疫関連遺伝子に60個の非同義置換(アミノ酸を変化させる塩基置換)を起こすものが含まれていることを確認した。これらは薬剤や病原体に対する種特異的な反応を規定する因子の探索に有用だと考えられるという。
すでに研究チームでは、8年前よりカニクイザルの多様な組織の12万以上の完全長cDNAクローンの蓄積と解読を進め、ヒト疾患遺伝子と対応づけたデータベースの構築を行ってきており、今回解読したゲノム配列がリファレンスとして、完全長cDNAとともに、今後の創薬・疾患研究に幅広く活用されることが期待されるようなるとの期待を示している。
なお、解読したゲノム配列はDDBJ(日本DNA データバンク)から公開(DRA000430)されているほか、全SNVデータは医薬基盤研究所のデータベース(QFbase)にて公開されている。
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