AppleとAmazon.comの競争激化が顕著に - 互いを最大のライバルとして意識か

米Appleと米Amazon.comの競合が顕在化しつつある。これまでゆるやかに競合しつつも共存関係にあった両社だが、最近の双方の戦略の変化によりあらゆる主力分野での競合が目立つようになり、「コンシューマのデジタル生活」という観点では最大のライバル関係の1つとなりつつある。その背景について見ていこう。

以前までであれば、Appleはソフトウェア+ハードウェアを開発・販売する企業、Amazon.comはコンテンツをオンライン販売する企業という明確な線引きがあった。だがコンテンツやサービスを楽しむ場としてのスマートフォンやタブレットというデバイスに注目したAppleはiPhoneとiPadを発売して大ヒット商品とし、一方のAmazon.comはコンテンツ販促ツールとしてのハードウェアの可能性に注目し、ヒット商品である電子ブックリーダー「Kindle」をリリース、さらに汎用性を高めたタブレットの「Kindle Fire」を発売するに至った。しだいにその戦略がオーバーラップしつつあるのだ。両社の周囲を見れば、同じ道を目指す企業としてはGoogleやMicrosoftなどが控えているが、これまで接点の少なかった2社が強力なライバル関係になりつつあるというのは象徴的だ。

これについて、両社が互いを意識して製品やサービスの強化に邁進しているという分析をWall Street Journalが報告している。実際のところ、スマートフォンやタブレットといったハードウェア、そしてソフトウェアを含めたユーザビリティの面ではApple優位で状況が進んでいる。Kindle Fire発表で低価格タブレットの道を開いたAmazon.comだが、その世界シェアはわずか4%と、7割超のシェアを持つライバルと比較して大きく離されている。スマートフォンについては、Amazon.comが年末商戦をターゲットに製品開発を進めていることが伝えられているが、ご存じのようにライバルであるiPhoneの牙城は強力だ。対応アプリについても、iPad用が22万超なのに対し、Kindle Fire用はその10分の1程度だ。基本的なプラットフォームとしては、Appleのほうが先行しただけの利がある。

一方で、コンテンツ面を見ると、長らくKindleビジネスを続けているAmazon.comの電子書籍プラットフォームとしての存在感は圧倒的だ。WSJによれば、Amazon.comのシェアが6割超なのに対し、ライバルのiPadの書籍コンテンツの市場は1割にも満たない。

自身の弱点を把握し、それを真っ先に強化していくのが最近の両社の動きのようだ。例えばAmazon.comは自身のKindle Fireのソフトウェアが初期Kindleの内容を引きずった不十分なものであることを理解しており、現在Appleの本社がある米カリフォルニア州クパチーノの近くにソフトウェアチームが配置され、UIやパフォーマンスの強化に加え、ソフトウェアとハードウェアのさらなる統合を目指して日夜開発を続けているという。また最近ではYapとUpNextという、地図サービスならびに音声認識技術を開発する2企業を買収し、将来的なサービス統合を目指しているという話もある。この2つの機能はAppleがiOSで最近特に強化している部分でもあり、これに対抗する狙いがあるというのだ。

Amazon.comを警戒しているのはAppleも同様で、7~8インチサイズの「iPad mini」開発計画が伝わっているだけではなく、アプリ開発者らに対してApple幹部が伝えた話として、同社はGoogleよりもAmazon.comの動きを警戒している様子だったという。Kindle Fireは199ドルと、499ドルのiPadに比べて300ドルも安価だが、これはコンテンツビジネスを軸に収益を回収しようとしているため。噂されているiPad miniの販売モデル(対抗の仕方)が、今後のAppleの同市場における戦略の行方を占う指針となるだろう。また弱点となっている電子書籍分野でも、iBooks Authorなどのソフトウェアの提供や学術機関との提携で、特に教育分野でのプレゼンスを高めて対抗していこうという狙いが見える。

開発者たちにとっての悩みの種は、今後もこうした個別のプラットフォームが併存し、そのいずれをもターゲットにしていかなければならない点だ。これはチャンスであると同時に、コスト負担の増加にもつながり、今後も取捨選択を迫られる結果となるだろう。例えば直近では、米New York TimesがBlackBerry向けアプリの提供を中止しており、その理由として「利用率の低さとコスト負担」を挙げている。競争体力の落ちたプラットフォームはしだいにこのような形でふるい落とされていくことになると思われるが、これが1~2社に絞られるのはまだまだ先の話のようだ。

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