慶應義塾大学医学部の鈴木則宏教授(神経内科)や広瀬信義専任講師(老年内科)などの研究グループは、健康で105歳以上も長生きした人の細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製し、神経細胞を作ることに成功した。老化研究だけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病などの発症前診断や予防・治療薬の開発研究などに役立つという。
研究グループは、生前に重篤な疾患がなく極めて健康的な老後を過ごして105歳以上で亡くなった2人から皮膚の細胞(線維芽細胞)を採取し、iPS細胞を作製した。さらにドーパミン細胞など、いくつかの種類の神経細胞に育てた。
作製した細胞を重篤な疾患のない理想的な正常iPS細胞(スーパーコントロール)として、アルツハイマー病やパーキンソン病由来のiPS細胞(と比較したところ、アルツハイマー病では神経を壊す毒性の高いタンパク質であるβ(ベータ)アミロイド、パーキンソン病においてはα(アルファ)シヌクレインが、それぞれ2倍近く多量に産生されていることが分かった。これらの高齢発症の神経難病では、胎生期の発生初期から異常タンパク質が過剰に産生され、蓄積が始まっている可能性が示唆されたという。
〈アルツハイマー病 (Alzheimer disease)〉 ドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマー(1864~1915)により1906 年に初めて報告された。認知症全体の約半分を占めるきわめて頻度の高い神経難病で、現在、日本での有病率は65 歳以上の1-3%といわれる。記憶障害で発症し、見当識障害や実行機能の障害、理解判断力の低下などが出現し、最終的には人格の崩壊、寝たきりとなる進行性の神経変性疾患だ。脳内のアセチルコリンが減少するため、抗コリンエステラーゼ剤などの内服治療薬が症状改善には有効だが、病気そのものに対する根本治療法はいまだ開発途上にある。
〈パーキンソン病 (Parkinson disease)〉 英国の医師ジェームズ・パーキンソン(1755-1824)により1817 年に初めて報告された神経難病で、現在、患者数は日本全国で12 万人~15 万人近くにのぼるといわれる。振戦(ふるえ)、筋強剛、動作緩慢、姿勢反射障害(倒れやすい)などの症状を特徴とする慢性の進行性の神経変性疾患だ。40 歳以下で発症する「若年性パーキンソン病」の一部は遺伝子の異常が同定されているが、頻度の多い高齢発症の「孤発性(こはつせい:遺伝性ではない)パーキンソン病」はいまだ原因不明だ。脳の黒質での神経伝達物質「ドーパミン」が減少するため、ドーパミンの補充やドーパミン受容体の刺激薬などの内服治療薬が症状改善には有効だが、病気そのものに対する根本治療法はいまだ開発途上にある。(参考:難病情報センター)
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