遠隔地にいる自分の分身(アバター)ロボットが手指でつかんだり、触ったりした物体の細やかな触感を操縦者が確かめながら、より高い臨場感をもって操作できる遠隔ロボットシステムを、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の舘暲(たち・すすむ)特任教授らの研究グループが開発した。絹布の“サラサラ感”やデニムの“ゴワゴワ感”などの触感もロボットを通して得られることから、手元の感覚に頼る必要のある精密作業や、直接見なくても触れただけで状況の判断などができる。遠隔医療や遠隔介護、災害現場などの人間が近づけない極限環境下での作業に応用が期待されるという。
舘教授らは、ロボットの遠隔操作において、操縦者自身がその場にいるような感覚を得ながら作業のできる双方向のコミュニケーション技術(「テレイグジスタンス」)の確立を目指し、そのための感覚伝達技術の開発に取り組んでいる。視覚・聴覚・触覚の感覚のうち、特に課題とされるのが触覚の伝達技術だ。
研究グループは昨年、アバターロボットが物を握ったときに「指先が押し込まれる力」(押下力)と「指先に加わる水平方向の力」(せん断力)、および物体表面の温度を伝えることに成功したことを発表した。操縦者はロボットを通じて握ったときの指先の力、温(ぬく)もりや冷たさを感じることができたが、そのときは物体表面の細かな触感までは伝達できなかった。
今回、研究グループは、アバターロボットの指先に搭載して触感を計測する「触覚センサー」と、操縦者の手に取り付けるグローブ型の「触覚ディスプレー」を新たに開発した。触覚センサーには、指先と物体との接触力を計測する圧力センサーと、広い周波数帯域の振動を計測する音響式触感センサー、温度センサーが内蔵されている。これらのセンサー情報を、触覚ディスプレーでは指の背や腹で分離して得ることにより、「触覚」のうちでも難しかった「圧覚」「振動覚」「温度覚」の3要素の提示を実現した。これによりロボット側からの布や紙などの物体表面の細やかな触感、手に持ったコップ内の物を一方の手のコップに移すときの触感などを伝達できるようになったという。
研究グループは、今回開発したシステムを、米国ロサンゼルスで8月12日(現地時間)に開かれる世界最高峰のCGとインタラクティブ技術の祭典「SIGGRAPH2012」(Emerging Technologies部門)に出展する。
今回の研究成果は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)〈研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」(研究総括:東倉洋一・国立情報学研究所名誉教授)〉によって得られた。
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