荒木飛呂彦氏による人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の連載25周年を記念し、仙台、東京で開催される「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」の記者発表会が5日、東京・六本木で行われた。発表会には原作者の荒木氏も登場し、ジョジョ公式YouTubeチャンネルにて全世界へ生中継された。

今年6月で52歳となった『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの作者、荒木飛呂彦

「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」は、7月28日(土)~8月14日(火)に仙台・せんだいメディアテーク、10月6日(土)~11月4日(日)に東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催される荒木氏初の原画展。『ジョジョ』の第1部~第8部はもちろん、『ジョジョ』以前の作品も含む膨大な数の中から選び抜かれた原画を展示し、その独特な世界感を体感できる様々な造形物も用意されているという。

黒のジャケットに蝶ネクタイ、チェックのパンツという出で立ちで登場した荒木氏は、まず始めに「漫画家というのは普段、仕事場ばかりに閉じこもっていて、印刷していただいたものを読者や皆さまに評価していただくことを基準に描いています。しかし、原画の中にはそれとは違った、演劇や音楽などにある"ライブ感"みたいなものが封じ込められている確信しています」と自身初開催となる原画展への想いを語った。

昨年は、イタリアのファッションブランド「GUCCI」の創設90周年を記念して、モードファッション雑誌『SPUR』の表紙を飾り、書き下ろし短編『岸辺露伴 グッチへ行く』を制作、さらには「GUCCI」新宿で原画展「岸辺露伴 新宿へ行く」を開催するなど、ファッション関連とのコラボレーションも続々と実現した『ジョジョ』。荒木氏はこのコラボに感激しており「主人公の熱い気持ちを表現するのが(少年)漫画だけど、ファッションというのはクールなんです。(この二つは)水と油と言っても過言ではない。そんな仕事が"SPUR"から依頼されるとは夢にも思わなかった、というかありえない!という気持ちでした」と一つ一つ言葉を選びながら、喜びを噛み締めるように話した。

「ジョジョの奇妙なスタンド体験」(写真右)では、言うまでもなく「ヘブンズ・ドアー」が発現した

しかもこの「GUCCI」とのコラボレーションはこれで終わりではなく、この「ジョジョ展」が、イタリア・フィレンツェにブランド創立90周年を記念して設立された「GUCCI MUSEO」内で開催されることも明らかとなった。この施設には、グッチの貴重なアーカイヴの展示、ブックショップやコンテンポラリーアートスペースが併設されており、ここに荒木氏の作品が並列して展示されることになる。

仙台、東京、フィレンツェと3カ所で開催される原画展にはそれぞれにキービジュアルが存在し、特に東京、フィレンツェのビジュアルは、今回の発表会が初お披露目となる。荒木氏は、その3つのビジュアルそれぞれについて丁寧に説明するが、荒木氏が"スタンド"や"承太郎"、"徐倫"といった言葉を発するたびに会場からは暖かな笑いが起こる。報道陣、来場者ともに、いかに荒木氏への"ジョジョ"語りを渇望していることが見て取れる一幕だった。

左から仙台展、東京展、フィレンツェ展のキービジュアル。特に東京展のものについて荒木氏は、富士山+承太郎+イギー+たんぽぽ=無敵ッ!!と独自の見解を述べた

今回の「ジョジョ展」、あるいは25周年記念では、そのほかにも様々な企画が用意されている。大日本印刷のAR技術を駆使し、iPadをかざすことで不思議な体験ができるという「ジョジョの奇妙な杜王町 MAP」(仙台『ジョジョ展』限定)、スクリーンの前に立つと自身の"スタンド"が現れ、ヴァーチャルに再現される「ジョジョの奇妙なスタンド体験」。インタラクティブメディアパートナーであるGoogleのサービスや技術を使用して、世界中のファン同士を繋ぐことを目的とした『ジョジョ』初の公式ファンページをGoogle+に開設。さらには、バンダイナムコゲームスから発売されるPS3用ソフト『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』、『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ化など、実に多種多様な企画の数々が明らかとなっている。

『ジョジョの奇妙な冒険』25周年記念イラスト

発表会のラストには質疑応答が行われ、報道陣からの質問のほか、Google+で募集されたファンからの質問にも荒木氏が答えている。先月で52歳になりながらも、未だに20代~30代の若々しさを保ち、ファンからは「波紋使い」「スタンド使い」「吸血鬼」などの噂が常につきまとう荒木氏だが、本日の質疑応答でもやはり「若さの秘けつ」について聞かれることに。「最近の質問ナンバーワンはそれです。よくわからないですけど、東京都の水道水で毎日顔を洗ってます。特に何もしていません」と荒木氏がはにかみながら答えると、会場は爆笑に包まれた。

また、Google+のファンからは「25年も連載できる秘けつは?」、「一番思い出のあるバトルは?」という2つの質問が。これらに対して荒木氏は「こち亀の秋本先生が規則正しい生活をなさっていると聞いて。漫画家には徹夜してヘロヘロになりながら締切に追われているというイメージがあったんですが、それ以来徹夜などをしないように、規則正しい生活をしています。25年というのは偶然です」、「僕が一番好きなスタンドは、ハーヴェストというお金を集めてくるやつですね、ものすごく好きです。バトルだったらやっぱりDIOと承太郎は思い出深いですね」と答えていた。

そして、「荒木飛呂彦としての次の夢は?」という最後の質問には「次の夢も何も漫画を書いているのが漫画家なので。今回皆さんの前にでてくるのは特別なこと。仕事場に戻って漫画を書きたいです」と、らしい一言を残し、大盛況の発表会は幕となった。

(C)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社