北大、ダーウィン以来のなぜ働き蜂は自分で子を産まないのかという謎を解明

 

北海道大学(北大)は7月4日、社会を作るメスと単独で巣作りするメスが共存する「シオカワコハナバチ」で調べたところ、複数のメス(働き蜂)が協力すると幼虫の生存率が大幅に上昇し、働き蜂たちは自分の母親(女王蜂)を経由して、単独のメスよりも多く、自分のものに近い間接的な遺伝子を弟や妹蜂を経由して残せる確率が高いことが確認され、結果として協力の大きな利益により各個体が得をするので、社会が維持されることが明らかになったと発表した。

成果は、北大農学院・博士課程2年の八木議大氏、同農学研究院の長谷川英祐准教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間7月4日付けで「Nature Communications」に掲載された。

進化生物学の開祖ダーウィンの自然選択説は、残す子供の数がより多くなる性質が進化することを予測している。しかしダーウィンは、社会を作る蜂や蟻のワーカーに見られる、自分で子を産まず女王のために働くという性質が、自らの子を産まないにも関わらず、なぜ自然選択により進化できたのかわからない、という疑問を残して世を去った。

この疑問に対して、1964年にW.D.ハミルトンは、社会を作ると自分で子を産まなくても母親である女王の残す子供の数が増え、母親経由で弟妹に伝わるワーカーの遺伝子量が増えるからだという理論的な説明を与えているが、以来50年を経ようとする今も、実際の蜂・蟻で証明されたことはない。

この問題は、ヒトの社会にまで共通する社会システムの進化機構の重要な未解明問題として、長い間検証が待たれていた。

シオカワコハナバチは、ごく一部のメスが単独で巣作りすることを利用して、単独のメスと協力するメスの次世代への遺伝子伝達量を測って直接比較することが可能だ。そこで長谷川教授らは、シオカワコハナバチを用いて上記仮説の検証を行った。

実験の結果、複数のメスが協力する巣では、幼虫の生存率が単独の巣より9倍ほど高いことが判明。そのような巣のメスは、多くの子を育てられることが明らかになったのである。

単独の場合は、成虫がエサ集めに出かけている間は幼虫が補食されないように見張ることができず、幼虫の生存率が下がってしまうことが原因と推測された。

母親と協力する娘は、幼虫(弟や妹)の高い生存率により、直接子供を産まないというコストを払うにも関わらず、単独で巣を営む同世代のメスよりも、母親経由で次の世代に伝わる遺伝子量を大幅に増やしているのである。

中には、血縁関係のないメス同士が直接産んだ子を協力して育てることで、多くの子を残すことに成功している巣もあった。協力相手が非血縁者の場合は自分の子を残すことで直接遺伝子を伝え、母親と協力する場合は母親経由で間接的に遺伝子を伝えていることが明らかになり、社会構築には幼虫の生存率を大きく高める効果があり、それが各協力個体の利益を高めていることが示された。

これらの結果から、Hamilton則が成立していることが証明され、社会構築の利益が還元されることで個々の利益が高まるが故に、自身の子をあきらめるというコストを払ってでも社会的協力が維持されることが明らかになったのだ。

今後は、ヒトを含むさまざまな生物に見られる社会的協力の維持機構を、社会参加のために参加個体が支払う社会構築のコスト(ヒトなら例えば税金、蜂なら直接産仔数の減少)と、社会参加により得られる参加個体の利益の観点から理解することで、永続的な協力がいかにして可能になるかが明らかになることが期待されると、長谷川教授らコメントしている。

社会を作るワーカーが単独のメスよりも多くの利益を得る機構



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