夢を見ているときは眼球が動く!?睡眠のメカニズムを解明し、実生活に活用を

6月28日より3日間にわたり、パシフィコ横浜にて、「日本睡眠学会第37回定期学術集会」が開催され、睡眠にまつわるシンポジウムが多数開かれた。この学術集会は毎年開催されており、睡眠ならびに生体リズムのメカニズムと病態、社会的意義を解明し、実生活に生かすことを目的とし、全国の医学、心理学、看護学などの関係者および臨床家が参加している。今年は過去最多となる45のシンポジウムの開催に加え、5年ぶりの首都圏開催ということもあり、2千名を超える来場者が事前に見込まれた。

日本睡眠学会の井上雄一会長

医療器具メーカーの展示や、書籍販売も

今回の学術集会では、睡眠学の学際的な進歩を若手研究者はもちろん、睡眠を専門としない医療関係者などにも広く普及することを目的としている。

参加者が自由に聴講できるシンポジウムをメインホールと7つの会場で随時開催。28日に開催された「レム睡眠中の情報処理過程と夢」というテーマでのシンポジウムには、立ち見が出るほど大勢の聴講者が集まった。

レム睡眠と夢の生成との関連は?

このシンポジウムでは冒頭、進行を務める広島大学大学院総合科学研究科の小川景子氏より、レム睡眠の特徴として、急速眼球運動や呼吸および心拍の不規則な変動などの生理的特徴と、夢を見る体験という心理的特徴があることを基本事項として確認。情報処理という観点から、人の脳機能システムを探求したいという同会の趣旨が説明された。

シンポジウムでは4人の学者が解説を行った。福島大学共生システム理工学類神経科学研究室の小山純正氏は「レム睡眠調節の神経機構から夢発現のメカニズムを考える」と題してスピーチした。扁桃体(=脳の側頭葉内側にある神経細胞)は、レム睡眠中の自律神経系の変動、すなわち夢の発現に関与しているという。

福島大学共生システム理工学類の高原円氏は「事象関連電位によるレム睡眠中の情報処理過程」と題してスピーチした。睡眠中にも音刺激に対し脳が反応を示すことが明らかとなっているが、レム睡眠中の急速眼球運動が起こっているときには、外界に対する注意が向けられにくいといった実験結果を報告。。さらに、扁桃(へんとう)体の活動がレム睡眠中の眼球運動の発生と密接に関連していることを説明した。

座長を務める(独)情報通信機構の宮内哲氏の講演テーマは、「fMRIと脳波の同時計測によるレム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳活動」。頭部を固定した状態で睡眠時の眼球の動きを撮影したという珍しい動画を冒頭紹介するとともに、視覚障害者は視覚体験がないため、視覚の夢はないものの、睡眠中に急速眼球運動が起きていると説明した。

スピーチする小川景子氏(左)と宮内哲氏(右)

そして広島大・小川景子氏は「レム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳活動と夢の生成過程」と題してスピーチを行った。

小川氏によれば、夢見体験(夢を見ること)は内因性情報処理のひとつとのこと。従来の研究でも急速眼球運動との相関が指摘されていたが、あくまで「観察したら両者が同時に見られた」という主観的な報告であった。これを神経生理学的視点から客観的に検討した結果を報告したいというのが今回のスピーチの趣旨だという。

小川氏は覚醒中(=起きているとき)のサッケード、すなわち衝動性眼球運動と、睡眠中の急速眼球運動に伴う脳電位を比較調査した。その結果、直前の睡眠時に夢を見たと答えた人の急速眼球運動密度が57.5%であったのに対し、夢を見なかったと回答した人の急速眼球運動密度は35.3%にとどまった。つまり、急速眼球運動が多いほど、夢見体験が多いことが調査結果から明らかになった格好だ。

さらに、急速眼球運動が生じることで、レム睡眠中の脳活動が活発化しているとみられ、急速眼球運動が多いほど夢が鮮明であるとする調査結果も報告された。このことから小川氏は、急速眼球運動がレム睡眠中の脳機能を解明する手がかりとなる可能性があると結んだ。

羊を数えても眠れない!?

会場では医療器具メーカーなどの製品展示コーナーや、睡眠学に関する書籍の販売コーナーも設けられた。また、学術関係者により制作されたポスター掲示のコーナーも設けられ、学術分野別に研究成果を報告するポスターが数多く壁に貼られた。

多分野の貴重な報告が数多く掲示された

ユニークな発表も多くあった。たとえば高知大学教育学部環境生理学教室の竹内日登美氏らによる「大学生アスリートの競技力の差異による睡眠習慣の違いと、生活改善の取り組みの効果」と題した報告では、高知県内の大学のサッカー部所属学生を競技力順にグループ分けした上で、睡眠や食事など、生活改善の取り組みを1カ月間にわたって実施してもらった。

その結果、短いときでも睡眠時間を6時間確保するなど、競技力の高い学生は健康維持、生活改善に対する意識が高く、競技力の上昇には睡眠習慣や生活リズムの是正が必要であることが示唆されたという。

「日米比較」などユニークな掲示も

また、福岡浦添クリニックによる「日本人とアメリカ人の睡眠呼吸障害病態の比較」と題した報告では、顎顔面形態の異常が睡眠呼吸障害の原因のひとつであることを踏まえて、佐世保基地や岩国基地の軍人および関係者の協力も経て日米の比較を実施。

その結果、アメリカ人は日本人と比べて体格の割に無呼吸の病態が軽度であり、睡眠が深い人が多い傾向が認められたと報告している。そして、その結果から日本人は欧米人と比較して、上気道の解剖学的および機能的な相違が存在することが示唆されるという。

さらに、広島国際大学心理科学部臨床心理学科の金子凌太郎氏らによる「羊を数えると本当に眠れるのか?」という報告では、大学生98人への聴き取り調査から、実際に羊を数えて眠れた経験があると回答した学生はわずか9.2%であったと明らかにした。

その上で、「腹式呼吸の方が脳の興奮を抑えて心身ともにリラックスでき、早く眠気を催すため、羊を数えるよりは腹式呼吸の方が効果的」と結んでいる。

日本睡眠学会では、今回の学術集会の開催に先立ち、学会としてはまだ事例が少ない、FacebookやTwitterを開設し、広く周知した。今後も広く医療関係者への参加を呼びかける方針だ。

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