日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は6月12日、IBMの提唱する次世代ITインフラのビジョン「スマーター・コンピューティング(Smarter Computing)」の実現に向け、「テクニカル・コンピューティング」分野の強化を図るために、2012年1月に買収したPlatform Computingのソフトウェアなどの製品群を「IBM Technical Computing」製品群として提供していくことを発表した。
同製品群により、スーパーコンピュータの領域で利用されていた技術を一般の企業でも活用できるようになり、ビッグデータの高度な分析など、業務の効率化や資源の有効活用が可能になると同社では説明している。
製品の構成としては、Platform ComputingのソフトウェアおよびHPC向け機能を拡張したIBMのハードウェア/ソフトウェアとなっており、これらの製品を包括的に提供することで、カスタマは複雑な計算処理を高速に行うための最適なシステム環境を構築することが可能となり、コンピュータ資源の効率的な活用が可能になることから、ハードウェアの増設や設置スペースの削減、消費電力の抑制などが可能になるという。
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日本IBM システム製品事業 マーケティング&ソリューション 理事の星野裕氏 |
日本IBM システム製品事業 マーケティング&ソリューション 理事の星野裕氏は、「2020年のデータ量は2009年の44倍に増加する。そのデータの多くが、SNSを代表とする個人の生成するデータと、モノそのものに搭載されているセンサなどによるデータといった非構造化データ」と指摘。こうしたITを取り巻く動向に対し、「経営とITのリーダーは"データ爆発"、"複雑性を増すIT"、"非効率なIT基盤"の3つの課題に直面することとなる」(同)とのことであり、そうした課題に応えるべくSmarter Computingを提供しているとする。
Smarter Computingは大きく3つの戦略に分けられる。1つ目はビッグデータをいかに効率良く意思決定に結び付けるかをリアルタイム分析により最短納期で実現すること。2つ目は、さまざまな業務ごとに応じたワークロードに最適化したリソースの配分によるコスト削減の実現。そして3つ目は、クラウドの活用による資源の柔軟な割り当てと、それによる新サービスの迅速な立ち上げによるビジネスプロセスの変革と競争優位性の確保だ。
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2020年のデータ量は2009年比で44倍に。その多くがセンサなどのデータとSNS系のデータとなることが予想される |
IBMではSmarter Computingによる3つの戦略により、市場環境の変化に対して迅速かつ柔軟に対応を図っていく |
「こうした戦略を詰めていくと、企業に求められるインフラ要件が、これから変わってくることが見えてくる。従来の企業系は汎用型のリソース占有型が中心だった。一方HPCは高度集中型であったが、そういった分野で培われた大規模システム構築やデータ解析などの数値的、統計的に表現される複雑な関係のシミュレーションやモデル化、予測技術などが、企業のアプリケーションでも求めらえるようになる」(同)とのことで、そうした要件に対応することを前提にSmarter ComputingではHPCの価値を3つのコンポーネントに整理することで提供していくとする。
1つ目は何よりもパワフルであること。計算能力を稼働率を落とさずにいかに高めていくかということが重要で、ここにHPC分野で活用される高度なスケジューリング機能などが適用されるという。また、ハイパフォーマンスを実現したとしても電気代や空調費用などのコストがかかっては意味がないということで、スーパーコンピュータの構築で培われたコンピュータノード、ストレージ、ネットワーク、ソフト、そしてサービスを包括的に提供することで、最適な展開方法の選択肢を提供するという。
2つ目は包括的であるということ。さまざまなコンポーネントやハードウェア、ミドルウェアに加え、サービスまで含めた形で包括的に提供することで、ソリューションとしてのリソースの最適化を図ることが可能となるという「これだけ幅広い分野を包括的に提供できるのがIBMの強みだ」という。
そして3つ目は、一般の企業ユーザーが簡単に使えるかどうかという点。HPC向け技術をそのまま活用しようと思っても、運用負担が大きいことから、そこから管理を容易化したり専門スキルを不要するなどを図ることで、生産性の向上を図ることを目指したのが今回提供されるソフトウェア群になるという。
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従来の企業インフラは汎用型が主であったが、ビッグデータの解析にはそれでは不利で、そのためにはHPC分野のような高度集中型のシステムが必要となる。しかし、それだけでは稼働率が低くなるため、クラウド化により、必要に応じてリソースの配分を切り替え、システム全体の稼働率を上げる必要が出てくる |
Technical Computingの概要 |
ちなみにTechnical Computingで提供される製品は以下の通り。
IBM PlatformシリーズはいずれもHPC分野で提供されてきた複雑なアプリケーションのワークロード管理用ソフト(LSF)であったり、グリッド環境において高速処理を実現するソフト(Symphony)などをより、一般民生ユーザー向けに使いやすくしたもの。
一方ハードウェアとなるiDataPlex dx360 M4は2012年4月に発表されたXeon E5ファミリ搭載ラックマウントサーバで、GPUコンピューティング用NCIDIA Tesla K10(Keplerアーキテクチャ)を2枚搭載することが可能だ(同社ではIntelのMICアーキテクチャへの対応も進めているという)。また、独自設計による水冷技術「ダイレクト・ウォーム・ウォーター・クーリング」により、空冷式システム比で最大40%の冷却効率向上を図ることができる。さらに、56GbpsのFourteen Data Rate(FDR) InfiniBandならびに10Gb Ethernetへの対応も可能となっている。
なお、同製品群は6月15日より同社および同社のパートナーより順次、出荷が行われる予定。概算価格はdx360 M4の1ノードで42万円(税別)、84ノード1ラック構成で3897万円(税別)で、このほかに利用するソフトウェアやサービス費用が加わることとなる。
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