ビジネスシーンにおいて、「英語力が必要だ」と感じている人は多いのではないだろうか。2010年にユニクロを運営するファーストリテイリング、楽天が英語の社内公用語化を決定したことが話題になったように、これからはますますグローバル化が加速すると予想されている。

この流れを受けるかのように、2011年度から、小学校高学年の英語教育が義務化された。彼らのような教育を受けた世代が社会人デビューする前に、英語力を身につけることは、さらに求められるだろう。このような状況下において、社会人はどのような英語学習をしていけばいいのだろうか。

ビジネスシーンにおける英語力の需要の高まり

はじめに、英語力のニーズが高まる現在、ビジネスパーソンは英語力について、どのように考えているのかをみていこう。

クロス・マーケティングが実施した「英会話スクールに関する調査」によれば、日本のビジネスパーソンは、普段、ビジネスで英語を使う機会は少なく、ビジネスレベル以上の英語力を自覚している人は、1割程度にとどまるという。

ビジネスレベル以上の英語力を自覚する人はわずか

ただし、ビジネスシーンにおける英語力のニーズは高く、現在ビジネスで英語を使用していない人でも、その4割は「仕事の場で英語を使ってコミュニケーションができるようになりたい」と回答。今後、日本はグローバル化し、英語でのコミュニケーションが必要になるという漠然とした危機感から、英語力をつけたいと思っている人も多いようだ。

約半数の人がビジネスでの英語力の必要性を感じている

同社では、すでに英語力を身につけている人たちにも、そのスキルについて調査している。その結果、日常レベルの英語力があると自覚している人でさえ、6割が「言いたいことが言いきれない」「会話のスピードについていけない」など、実際のコミュニケーションでは英語力が不十分だと回答。

現在、すでにビジネスにおいてある程度のコミュニケーションがとれる人ですら、半数近くが「自分の言いたいことが全部言いきれていない」という悩みを抱えているという。英語の上級レベル者においても、実際のコミュニケーションシーンでは、議論の流れに即した発言や、主導権を握るコミュニケーションができるとはいえない実態が浮き彫りになった。

英語でのコミュニケーション力不足を実感している模様

このように、英語力が必須であると感じている人が多い反面、実際に英語力を身につけている人は少ないことがわかった。また、対話力やコミュニケーション力を身につけなければ、ビジネスシーンにおいて英語を「話せる」とはいえないようだ。

「英会話」から「英対話」へ

前述のとおり、ビジネスシーンで「使える」英語力を習得するには、「対話力」と「コミュニケーション力」がキーになるといえそうだ。それを実現する場として、ニチイ学館が「COCO 塾」という、一風変わった英語のスクール事業を開始した。

対話力を高める、新しいタイプのスクールが登場

“COCO”は「Communication Competence(伝達能力)」の頭文字。外国語でのコミュニケーションスキルを磨くために絶対不可欠な3つの能力を養い、「使える英語」とその先の「対話力」が身につくスクールにしたいとの思いが込められているという。

この3つの能力とは、「Linguistic Competence(言語能力)=音声・単語・文法を習得してセンテンスをつくる能力」、「Discourse Competence(談話能力)=センテンスをつなげ、会話にする能力」、「Sociolinguistic Competence(社会言語能力)=社会的に適切な言語を選択して使える能力」のことだ。

この能力を高めるために、大手英会話スクールでは例を見ない、2インストラクター制によるきめ細かい指導によるグループレッスンを中心としたコースを設定。「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つの語学能力を養うという。

さらに、異文化や国際的なテーマなどを「英語で考え、英語で学ぶ」ことで、国際人として必要な知識や教養も同時に身につけ、真の「対話力」を磨くことを目標としている。

コンセプトは「英会話から英対話へ」。英語で聞いた内容を、日本語に訳してから理解するのではなく、英語で考え、発言できる能力を養成するためのレッスンを展開している。また、英語を単なるコミュニケーションツールとして学ぶのではなく、異文化や国際的なテーマなどを英語で学ぶことにより、必要な知識や教養も同時に身につけ、真の国際人としての「対話力」を磨くことができるという。

すでに、新宿校、川崎校、松戸校など、24校を開校(※6月5日現在。順次開校予定)。順次、開講教室数・エリアを全国に広げ、初年度は92校の開講を予定しているそうだ。

英語を話せるようになるには、「対話力」が必要

このように、ただ英語を話すだけではなく、対話力が求められている現在、ビジネスパーソンにはどのような英語学習が有効なのだろうか。

英語学習におけるポイントについて、社会人を対象とした英語学習の通信講座を企画制作している、株式会社デルタプラス・代表取締役の湯川彰浩氏に話をうかがった。同氏は「社会人のための97%失敗しない最後の英語学習法」(エール出版社)という著書を上梓している。

「加速する国際化に伴い、昇進の条件としてTOEICでもある程度のスコアが求められることも多いですね。したがって、社会人における英語学習者の割合は、年々増加の一途をたどっています。

ただし、単純な英語力だけが求められるケースの方がまれです。コミュニケーション力や文章力なども実際の現場では必要ですし、こうした対話スキルは、普段用いる日本語の使い方と相関している部分が大きいものです。

当社の通信講座の受講生は、大学院受験を目指す社会人が多いのですが、入試で出題される問題は和訳や英訳がほとんど。つまり、英文を読解して日本語でまとめたり、逆に複雑な日本語をわかりやすい英語に変換したりする力が試されているわけです。

英語学習というと『英会話』と考える方も多いかもしれませんが、目的によって求められる英語力はさまざま。英語に加えて日本語の使い方も意識して、英語を使った現場でも生かせる対話スキルを磨いてほしいですね」

同氏の言うように、英語力を高めるためには、「対話スキル」の向上も必然的に求められている。そのためには、日本語についても見直す必要があり、これから英語を学習する人にとっては無視できないだろう。

これからは、対話力という視点で、英語だけでなく、日本語も含めて見直してみてはいかがだろうか。

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