名古屋大学(名大)は6月2日、乱れた食事のタイミングが代謝異常を引き起こすメカニズムを明らかにし、食事の情報はインスリンにより媒介され、休息期(夜)の食事は肝臓時計を乱すこと、活動期(朝)の食事は肝臓時計を正常化させることを明らかにしたと発表した。食事のタイミングを規則正しくすることで、増加しているメタボリックシンドロームや生活習慣病を予防することが期待できるとしている。
成果は、名大 大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間6月1日付けで英科学雑誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。
現在日本では、エネルギー摂取が増加していないにもかかわらず、肥満・糖尿病が急速に増加してきている。つまり、メタボリックシンドロームの人が急速に増加してきているというわけだ。
その原因として、食のスタイルの変化が大きな影響を与えているのではないかといわれるようになってきた。その中でも、朝食の欠食を初めとする食事のタイミングが重要な役割を果たしているのではないかと、考えられるようになってきている。
昔から洋の東西を問わず、規則正しい食生活は、健康維持に欠かせないといわれてきたが、その重要性や寄与度がどの程度なのかは詳細にはわかっていなかった。
しかし、比較的最近になって時計遺伝子が発見され、身体の概日時計(内在的な時計)が重要な生理作用を持っていることが明らかにされたことで、状況が変わってきた。
時計遺伝子をノックアウトしたマウスでは代謝異常が生じ、メタボリックシンドロームを発症することが報告され、正常な動物においても、食事のタイミングを乱すと血中コレステロールが増加することを研究グループは過去に報告している。
代謝の中枢を担う肝臓の時計は、主に食事の影響下にあることが知られており、不規則な食事のタイミングは肝臓時計を乱し、代謝異常を引き起こすことがわかってきたというわけだ。
ただし、食事のタイミングがどのようにして肝臓時計を制御するのかについてはわかっていなかった。今回の研究は、この同調因子(シンクロナイザー)を捕まえることを目的にスタートした形だ。
これまでさまざまな因子が提唱されてきたが、今回の研究でインスリンが強力な同調因子であることを証明することができた。インスリンが、本来分泌される時でない休息期に分泌されると肝臓時計は異常になり、活動期に分泌されると正常化することが明らかとなったのである。
実験動物として用いたラットは夜行性であるため、肝臓の活動期ももちろん夜だ。なお今回の実験では、肝細胞の時計が、3次元培養することによりシャーレ上で長く維持されることも見出されている。
そこで、バイオイメージング技術を用いて、リアルタイムに肝細胞時計を観察することで、インスリンが同調因子として働いていることを証明。実際には、時計遺伝子に「ルシフェラーゼ」(蛍の発光を担う酵素)をつないだ遺伝子を導入したラットから肝細胞を調製し、肝細胞を3次元培養させ、その光をリアルタイムで観察することにより、インスリンの同調作用を証明した形だ。
具体的には、「位相反応曲線」を示したため、同調因子であることが証明された。なお位相曲線とは、生物が持つ約24時間周期の概日時計の同調因子には二面性があり、例えば睡眠障害を強い光で治療する場合に、朝に強い光に当たると朝型に戻るが、夜に強い光に当たるとさらに夜型になってしまう。つまり、同じ刺激も時間帯によって逆の効果が出ることになる。このことを位相反応曲線が示されたという。これがあると同調因子であることがわかるのだ。
さらに動物個体においても、インスリンを欠乏させた糖尿病ラットを用いてインスリンの効果を検討したところ、やはり位相反応曲線が示され、動物個体でもインスリンが肝臓時計の同調因子であることが確認された。
そして、休息期(夜)のインスリン分泌は肝臓時計を異常にして、活動期のインスリンは正常化させることが明らかとなった。このインスリンの作用は、脂肪細胞でも観察された。
不規則な食生活は間違いなく不健康になってしまうわけで、逆をいえば、肝臓時計や脂肪時計を正常化させられれば、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防につながる可能性が明らかとなったというわけだ。また糖尿病では、肝臓時計異常を伴うため代謝異常が増強されていることがわかり、インスリンの投与タイミングが重要であることも判明している。
要は、健康な生活を送るには、規則正しい睡眠、規則正しい食生活が必要だというわけだ。
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