ルネサス エレクトロニクスは5月23日、モバイル・車載機器向けに高画質デジタルTVの画像表示を容易に実現するカラーマネージメントシステムの提供を開始すると発表した。同社および子会社のルネサス モバイルの車載情報端末用SoC「R-Car」シリーズに搭載して、6月より提供を開始する。

高画質な映像コンテンツの視聴は、デジタルTVやプロジェクタによる家庭内や映画館など室内での鑑賞に限られていた。しかし、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器や車載情報端末が急速に普及し、地上波デジタル放送やインターネット・コンテンツ、BD/DVD、デジタルスチルカメラ(DSC)の静止画・動画像など各種の映像表示に対応するようになったことから、さらなる高画質の画像視聴に対する要求が高まっている。

しかし、従来のモバイル・車載機器は、画像表示のためのコントラスト・ブライトネス・カラー・ティントなどのユーザ調整機能や画面内に存在するオブジェクトの認識を容易にするためのダイナミック・レンジ補正機能は搭載されていたが、高画質化処理は搭載しておらず、デジタルTV同等の高画質技術が求められていた。

同カラーマネージメントシステムは、どのディスプレイでも同じように画像本来の色彩で表示するための色・輝度信号の高精度処理や、ディスプレイとプリンタなどの機器間での再現色を合わせるなどの管理を行う。

特徴は大きく3つ。1つ目は、高画質化技術を駆使したソフトウェア処理により、高コントラストで色鮮やかな画像を実現したことにある。「R-Car」シリーズでは、色・輝度信号処理用の機能として搭載する1次元や3次元ルックアップテーブルなどの高精度処理を行うための最適なパラメータ値(設定値)を自動的に作成・設定する高画質処理技術用ソフトウェアを車載機器用として初めて製品化した。これにより、色・輝度を処理・管理する幅広く高度な技術ノウハウがない場合も、容易に高コントラストで色鮮やかな画像を実現するカラーマネージメントシステムを開発が可能となる。また、高画質処理システムの開発期間の短縮にも寄与する。

2つ目は、色・輝度処理ハードウェアを最大限に活用したソフトウェア処理による機能ライブラリ。従来、色・輝度の高画質処理は、LSIなどのハードウェアで実現されたが、本システムでは、ソフトウェアにより実現した。提供される6色(RGBYCM)ごとに輝度・彩度などの調整を行う6軸調整などの約10数種類の高画質化機能は、機能ごとにライブラリ化されているため、必要な機能ライブラリを自由に選択することができる(選択した機能ライブラリが、「R-Car」シリーズに搭載されている色・輝度処理用ハードウェアIPのVSP/VIOに最適なパラメータを自動的に作成・設定される)。さらに、複数の機能ライブラリを選択することで、複数機能の同時動作も可能となる。このため、新製品では、ハードウェア仕様による制限が少なく、ニーズに対して、最適な高画質ソリューションを柔軟に対応する。また、これらの機能ライブラリは、新製品が提供するソフトウェアを「R-Car」シリーズに実装するだけで完成し、その他の特別なハードウェアを追加搭載する必要がないため、システムの小型化や開発期間の短縮など、コストの削減が図れる。

3つ目は、ソフトウェア処理による機能提供と調整用GUIなどの提供による充実したユーザ・サポート。ソフトウェアによる機能実装であるため、性能改善やカスタマイズなど、様々なニーズへの柔軟な対応が可能であり、採用後のメンテナンスに関しても万全のサポートするという。また、ユーザー側での機能ライブラリを使用した開発工程においても、調整用GUIや機能効果確認用シミュレータ、および調整済パラメータ値の提供など、充実したサポートを準備しているとしている。

今後、モバイル用「R-Mobile」シリーズへのサポートを予定するとともに、カラーマネージメントシステムとして、色・輝度信号処理による高画質化を実現する数多くの魅力的な機能ライブラリの開発を行い、幅広くタイムリーに市場のニーズに対応していくとコメントしている。また、関連ハードウェアおよびソフトウェアの性能向上の他、調整用GUIや機能効果確認用シミュレータ以外のサポートに関しても充実化を図っていく考え。

カラーマネージメントシステムの処理イメージ。上がダイナミックガンマ補正前、下が補正後