フィッチ・レーティングス(フィッチ)は22日、日本の外貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)を「AA」から「A+」に、円建て長期IDRを「AA-」(AAマイナス)から「A+」にそれぞれ引き下げたと発表した。格付アウトルックはともに「弱含み」。フィッチはまた、カントリー・シーリングを「AAA」から「AA+」に引き下げた。外貨建て短期IDRは「F1+」に据え置きとした。

フィッチのアジア太平洋地域ソブリン格付チームの責任者、Andrew Colquhoun氏は、「今回の格下げおよび格付アウトルック『弱含み』は、日本の公的債務比率が高水準かつ上昇しているために、ソブリン信用力に関するリスクが高まっていることを反映している。日本の財政健全化計画は、困難な財政状況にある他の高所得国と比較しても切迫感に欠けると思われるうえに、計画の遂行には政治リスクが伴う」と述べているという。

フィッチによると、日本の一般政府総債務残高は2012年末までにGDPの239%に達すると予想され、「これはフィッチが格付を付与するソブリンの中で突出して高い水準」(同社)。この債務比率は世界金融危機以降に61パーセントポイント(pp)上昇したことになるとみられるという。

これに対して、経済協力開発機構(OECD)諸国の中央値は39pp、「A」諸国の中央値は8pp。日本政府が多額の金融資産(フィッチの計算ではGDPの約80%に相当)を保有していることを考慮すれば、「他国と比べて大きくかけ離れた水準ではないものの、純債務も大幅に増加しつつある」(フィッチ)。

日本の財政運営戦略において、対GDP比の政府債務比率は2021年度にようやく低下に転じると想定。フィッチは、「日本が抱える債務規模を踏まえると、この財政再建ペースは緩慢なものであると考える」。さらに、「日本の財政健全化戦略は政治リスクにさらされている。日本政府の主な歳入増加策は、2015年度までに消費税率を現行の5%から10%に引き上げるというものであるが、この施策は直ちに実施されるものではない(2014年度に開始される計画)うえ、依然として政治的な議論の的となっている」(フィッチ)。

しかし、フィッチでは、「日本政府は極めて高い資金調達の柔軟性を維持しており、低い名目金利での資金調達が可能であることは、格付のサポート要因ととらえている」と分析。また、円は国際的な準備通貨であり、「安全な投資先という特徴も備えている」(フィッチ)としている。

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