東北大学(東北大)は5月17日、青色光照射により赤色に発光する新規のシリコン酸化物蛍光体を開発したと発表した。同材料により、高演色な白色LEDへの応用が期待できるという。

同成果は、同大学多元物質科学研究所 垣花眞人教授の研究グループと住友金属鉱山の共同研究によるもの。

白色LEDは、低消費電力、長寿命なことから液晶パネルのバックライト光源に広く使用されている他、照明用光源としても普及が始まるなど、急速に市場が拡大している。現在、使用されている大半の白色LED製品は、青色LEDと黄色蛍光体(YAG:Ce)を組み合わせたタイプが主流となっているが、この方式の白色LEDは赤色の光が弱く、照明用光源としては演色性が低いことが課題とされている。これは、赤色蛍光体を併用することで軽減できるが、現時点で実用的な赤色蛍光体は窒化物しかなく、特殊な製造工程を必要とするために材料費が高く、今後、蛍光灯の代替など、白色LEDをより多種多様な光源として普及させるには、より安価な赤色蛍光体が求められていた。

そのような中、同研究グループでは、橙~赤色(600~625nm)で発光するシリコン酸化物蛍光体を発見。同蛍光体は、青色LEDの光で励起可能であり、高演色な白色LEDへの応用が期待できるという。具体的には、アルカリ土類金属-シリコン複合酸化物を母体結晶として、発光元素としてユーロピウムを添加している。製造工程に特殊な設備を必要とせず、窒化物蛍光体よりも安価に製造でき、量産化に向いているという。

図1 シリコン酸化物赤色蛍光体の励起発光スペクトル

同研究には、水溶性のシリコン化合物であるプロピレングリコール修飾シラン(PGMS:Propylene Glycol Modified-Silane)を用いた水溶液法が用いられた。従来は、固体の原料粉末を機械的に混合して加熱焼成することにより蛍光体を得ていた。今回の研究では、液体原料を原子レベルで均一に混合して加熱焼成するため、従来法よりも成分が均一分布した蛍光体を得ることができる。また、PGMSを用いることで、数多くの組成のシリコン含有酸化物の合成を一度に行える並列合成法が可能となり、蛍光体の組成の最適化や、新規蛍光体の探索が効率良くできる。発見したシリコン酸化物赤色蛍光体は、このPGMS-並列合成法を用いた材料探索によるものという。今後も、PGMSの活用により、新たな蛍光体の開発の加速が期待できるとコメントしている。

図2 プロピレングリコール修飾シラン(PGMS)。プロピレングリコールをシリコン原子に結合させたもので、水溶性ケイ素化合物の一種。PGMSをシリコン含有酸化物の合成に展開する研究手法は垣花研究室独自のもの。