富士通は、同社がスーパーコンピュータ「京」や各種サーバ、パソコン、スマートフォンなどの製造で培ったノウハウ、ツール、人材を結集し、製造業のユーザーにものづくりノウハウとして提供するコンセプト「ものづくり革新隊」を確立し、2012年10月より3つのサービスを順次提供すると発表した。

「ものづくり革新隊」サービスの全体像

提供するのは、富士通の生産方式を実践したベテランや現場のエキスパートが、顧客の製品の開発や製造に参画し、ものづくりの改革につながるさまざまな診断、指導、サポートなどのコンサルティングを行う「ものづくりエキスパートサービス」、ICTソリューションに加え、富士通の製造で実践を重ねた20種以上の設備などを提供する「ものづくりツール」、耐久性が求められるパソコンや携帯電話などの衝突解析や、サーバなどの高度な品質検査業務を応用し、衝突・衝撃解析や故障解析などの専門業務のBPO(Business Process Outsourcing)である「受託サービス」の3つ。

また、本サービス提供にあたり、モデル工場として、スーパーコンピュータや各種サーバを製造する富士通ITプロダクツ、携帯電話の開発・製造を行う富士通周辺機、「出雲モデル」をはじめノートパソコンの生産拠点である島根富士通を公開し、ものづくり現場の視察機会およびものづくり革新推進部門や現場の推進者の実践的なノウハウを提供する。

富士通生産方式の実践事例

同社では、2003年よりものづくりの革新を開始し、2004年にはトヨタ生産方式(Toyota Production System:TPS)を導入。また、2007年からはフィールド・イノベーション活動を目的に、現場での改善スキルをもった人材を育成し、350名の部隊として組織している。

今回提供を発表した新サービスについて、富士通 産業ソリューションビジネスグループ長 執行役員常務 花田吉彦氏は、「これまでは、コスト削減など単発の課題解決が中心で、生産プロセス全体の最適化は難しかった。ものづくり革新隊は、富士通が持つものづくりのノウハウ、人材をトータルに提供し、お客様と一体になってものづくりの革新を提供するものだ」と説明した。

具体的なサービスとしては、「ものづくりエキスパートサービス」では、3Dデータ上での設計問題の潰し込み、量産生産性問題の潰し込みや海外生産シフト対応、企画・開発・生産準備などの国内支援とグローバル生産支援などを提供。また、ものをつくらないものづくりをサポートし、バーチャルで製品・工場を再現し、開発段階での設計の完成度と量産性の検証を実現する。

「ものづくりエキスパートサービス」例

生産設備の検証を行うためのVirtual Factory

「ものづくりツール」では、技術情報管理システム「PLEMIA」や3次元CAD「iCAD V7」、「VPS」や「GP4」などの製品開発や生産管理などのICTソリューションに加え、精密組立ロボット、部品を取り付ける組み立て装置、はんだ付け装置、塗布機、耐久試験機などを提供。

「ものづくりツール」例

「受託サービス」では、電気(伝送・ノイズ)シミュレーション、機構・冷却、プロセスシミュレーション、信頼性評価/故障解析/材料分析などの品質管理のほか、運用オペレーションなどの業務を提供する。

「受託サービス」例

花田氏はサービスの特徴について、「世の中にある生産管理システムは、ぶつ切りの業務システムが多い。今後、ものづくりのシステムは一体型のシステムを作っていかなくてはならない。その場合、システムをつなぐことが重要になる。これまでのノウハウを活かし、グローバルに対応したトータルのシステムを提供できるのが富士通の強みだ」と述べた。

同社では、今後サービス内容の拡充を図り、関連システムを含め、今後3年間で1,000億円の売上を目指す。