国際労働機関(以下、ILO)はこのほど、世界の労働市場に関する最新報告書「World of work report 2012:Better jobs for a better economy(仕事の世界報告書2012年版)」を発表した。

同報告書では、全世界の失業者数は、2008年に起きたリーマン・ショックに端を発した経済危機前の水準と比べて、依然として5,000万人余りの雇用が失われたままだと指摘。「雇用情勢は世界的に警戒すべき状態にあり、近い将来回復する兆しが見られない」(ILO)と警告している。

その理由としては、先進国を中心とする多数の政府が優先事項を財政緊縮と労働市場改革の組み合わせに移していることや、先進国における求職者の意欲低下による技能の消失、ならびに小企業の資金調達不足による投資や雇用創出力の低下などを挙げている。

さらに、欧州における"もの"を中心とした改革のいくつかが雇用創出に失敗した上、雇用の安定性を低下させて不平等を悪化させたとし、「労働市場の規制緩和と財政緊縮の組み合わせは短期的な雇用展望の促進に結びつかない」としている。ただし、雇用に優しい租税政策の組み合わせと公共投資や社会給付支出の増大が行われた場合は、先進国では来年にかけて200万人分近い雇用が創出されると分析している。

若者の失業率については、先進国の約8割、途上国の3分の2で上昇したと発表。貧困率は先進国の半分、途上国の3分の1で増加、不平等度は先進国の半分、途上国の4分の1で上昇している。また、先進国の求職者の平均4割以上が1年以上の長期失業者で、途上国ではほとんどの国において長期失業率と非労働力率の両方が低下したほか、先進国の3分の2で非自発的なパートタイム雇用、半数以上で臨時雇用が増えているという。

日本に関しては、東日本大震災の影響もあり、非労働力率が2009年の40.1%から2011年には40.7%に上昇したほか、就業率が2007年第3四半期58.3%から2011年の同時期には56.6%に低下したと報告。その上で、公共支出の削減が社会に否定的な影響をもたらすとし、景気再生に不可欠な公共支出のために、貧困世帯の可処分所得への支援措置を伴う税収増を通じた予算強化を提案している。

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