京大、TRIM28がT細胞性自己免疫疾患を抑制していることを確認

京都大学(京大)は、TRIM28(Tripartite motif protein 28)欠損マウス由来のT細胞が、自己組織に対して炎症性サイトカインであるIL-17を放出する炎症細胞へと自然に分化していることを確認し、TRIM28がT細胞の恒常性維持、および自己反応性T細胞の分化抑制に重要な分子であることを確認したと発表した。同成果は同大 医学研究科免疫ゲノム医学講座特定教授の本庶佑氏、同特定助教の竹馬俊介氏らによるもので、科学誌「Nature Immunology」に掲載された。

T細胞(Tリンパ球)による免疫は、ウイルス感染細胞やガン細胞を直接破壊する、もっとも強力な生体防御システムだが、この過剰な活性化はリウマチや自己免疫性甲状腺炎、I型糖尿病といった深刻な自己免疫疾患の原因でもあり、その制御機構の解明に向けた研究が世界中で進められている。すべてのT細胞は、病原体と出会うまで自己組織と反応し、ここから弱いシグナルを受け取って生存しているため、いつも自己組織に対して活性化する危険性を持っている。T細胞が、自己に対し間違って活性化した際には、PD-1やCTLA-4といった抑制レセプタが発現し、自己免疫疾患が回避されることがわかっているが、そもそもなぜ、大部分のT細胞が、健康な体内で抑制状態にあるのかは明らかになっていない。病原体に出会ったT細胞の強い活性化には、ダイナミックな遺伝子発現の変化がともなうことがわかっているが、自己と弱く反応したT細胞の活性化を抑制し、抑制状態を保つ分子や、そのメカニズムは不明な点が多い。

TRIM28は、ヒストンメチル化酵素や、ヘテロクロマチンタンパクとの会合を介して、多くの遺伝子調節を行うクロマチン凝集因子であり、これまでにも、個体の初期発生やES細胞の万能性維持に重要であることが報告されている。研究グループは、このTRIM28の機能発現に必須であると考えられるSer473残基が、生体内で起こるT細胞の生存シグナルによってリン酸化修飾を受けていることを見出し、TRIM28による遺伝子発現制御が、T細胞を調節すると考えた。

これを検証するため、T細胞のみでTRIM28分子を発現できないマウスを作製し、同マウスを、病原体が存在しないきれいな環境で飼育したところ、自然にT細胞が、自分自身の臓器(肝臓、腎臓、唾液腺、肺など)を攻撃し、早期に死亡することを確認した。その後の解析で、TRIM28欠損マウス由来のT細胞は、自己組織に対して炎症性サイトカインであるIL-17を放出する炎症細胞へと自然に分化していることを確認。TRIM28をもたないT細胞では、免疫の恒常性維持に大切と考えられる各種サイトカインの調節不全が起こり、体内で炎症細胞への自然分化を起こし、結果として全身性の自己免疫病を起こすことも判明した。

これらの結果は、TRIM28が、T細胞の恒常性維持、および自己反応性T細胞の分化抑制に重要な分子であることを示すものである。すでに実験で、TRIM28をもたないT細胞は、正常細胞にも働きかけて、炎症細胞への分化を起こさせるということが見出されており、研究グループでは、次のステップとして、この炎症促進メカニズムの解明を目標としている。また、実際の自己免疫疾患で、TRIM28による遺伝子調節機構が破たんしたと考えられる、有害なT細胞を同定することも目指しているという。もし、これが成功すれば、患者の体内で、特定のT細胞を除去することにより炎症の軽快を図ることが可能となる、従来とは異なる治療法の開発につながる可能性があるという。

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