日立製作所は4月16日、直流1500V架線対応の鉄道車両用SiCインバータを発表した。

SiCデバイスは、Siと比較して高耐圧であり、薄膜化による導通損失とスイッチング損失の低減できる。今回、日立は同製品向けにSiCのダイオードとSiのIGBTを組み合わせた3.3kVのSiCハイブリッドモジュールを開発、ダイオードの電力損失だけでなくIGBTの電力損失も低減している。同モジュールを使用することにより、インバータの高効率化を図ることに成功し、小型化に成功した。

インバータに使用するIGBTモジュールの電力損失では、電流が流れる時に発生する導通損失と、スイッチング時に発生するスイッチング損失の2つがある。SiCハイブリッドモジュールは、特にIGBTのターンオンスイッチング損失と、ダイオードのスイッチング損失の低減に有効だが、スイッチング時の電磁ノイズが増大する懸念がある。そこで、Si製インバータに適用してきた独自のソフトゲート制御技術をSiCハイブリッドインバータ向けに最適化し、IGBTのターンオン損失の低減と、スイッチング時の電磁ノイズの低減を両立させた。また、軽量なコンデンサであるオイルレスコンデンサを採用することにより、インバータ全体の軽量化にも成功した。これらにより、Siを用いたこれまでのインバータに比べ容積と質量を40%、電力損失を35%低減した。

鉄道用インバータを構成するパワーユニットは、通常、車両走行時の走行風で冷却される。走行風は、車両の走行にしたがって車両の前方から後方へ流れることから、冷却器の温度は風の取り入れである風上が低く、風下が高くなる。同製品では、流体解析技術を活用し、風上と風下の温度差と冷却効果を同時に最適化できるヒートパイプの配置を開発することで、冷却器を小型化・軽量化している。

日立では、将来的に同インバータを各種の鉄道車両に適用していくことで、小型で環境性に優れた鉄道車両の実現を目指していくとコメントしている。

鉄道車両用インバータ。SiCを用いることで容積と質量を40%低減した