4月16日、エーザイ株式会社によって、不眠症治療薬「ルネスタ(R)錠(一般名:エスゾピクロン)」の新発売記者説明会が開催された。同治療薬は、非ベンゾジアゼピン系としては国内では12年ぶりとなる治療薬だ。

国内外の臨床実験では、不眠症の主たる症状である入眠障害と中途覚醒の双方に対して有効であるという結果が出ている。また、臨床的に問題となる依存性や持ち越し効果などは認められていないと同時に、長期投薬による有効性の減弱もみられないことから、不眠症改善へのさらなる効果が期待されている。

説明会のタイトルは、「『これからの不眠症治療の新たな選択』―高齢、ストレス社会における不眠症治療の課題と12年ぶりの新薬が果たす役割―」。高齢化社会、ストレス社会といわれる現代において、不眠症が引き金となって起こるさまざまな弊害、不眠症治療の現状と課題、そして「ルネスタ(R)錠」が今後果たしていくことが期待される役割についての解説が行われた。

不眠患者の現状について解説された

不眠症になるとうつ病にもなりやすい?

説明会前半には、エーザイジャパン医薬マーケティング部 重点領域室・斎藤奈美氏によって、「不眠症の疫学からみるルネスタの開発意義」が発表された。これによると「ルネスタ(R)錠」は、不眠症の主症状である入眠障害と中途覚醒のいずれにも有効であるほか、原発性、併発性のいずれの不眠症にも有効だとのこと。併発性とは精神疾患、身体疾患をともなうもの。原発性はそのいずれにもよらないものをいう。

続いて、久留米大学医学部神経精神医学講座教授・内村直尚氏によって、「これからの不眠症治療の新たな選択」についての説明が行われた。

内村氏によると、人間の脳は体重の2%しか占めていないにも関わらず、身体全体で使うエネルギーの20%近くを消費しているという。しかも、現代人の生活は、身体よりも脳を使うことが圧倒的に多いため、十分な睡眠をとって脳を休ませる必要があるのだそうだ。

「睡眠中は、ストレスから解放されるため、心や脳が十分に休息をとることができる」と内村氏。

さらに、不眠が及ぼす悪影響として、「うつ病の誘因・憎悪」、「心血管イベントの誘発」「高血圧糖尿病脂質異常症」、「肥満の誘因・憎悪」、「仕事上の能率・生産性の低下」、「医療費の増大」などを挙げた。また、「年齢を調整した睡眠時間の死亡リスク」の統計結果から、睡眠時間が7時間の人がもっとも死亡率が低いことが判明していることを報告。適切な睡眠をとり、心身ともに十分な休養をとっていてこそ、日中、有意義に過ごすことができるし、健康で長生きすることができると説明した。

脳を休ませることの必要性について説明する内村氏

日本人はアルコールに頼りがち

また、不眠対策を国別に比較した結果、日本人は「医師に診てもらう」、「睡眠薬を服用する」という選択をする人が圧倒的に少ない。そのかわりとして、「アルコールを摂取して寝付きをよくする」という方法をとっているという調査結果を報告。内村氏はその理由を、「日本人は、眠れないくらいでは死なないと思っている。睡眠薬を服用することは怖いからアルコールで対処しようと思っている」と説明した。

しかし、睡眠に対するアルコールと睡眠薬の影響を比較した結果、アルコールには「寝付きがよい」という効果しかなく、中途覚醒、深睡眠、耐性、依存症予防に対しては有効ではないことが分かっているとして、中途覚醒にも効果が認められていながら、依存性や持ち越し効果の心配はない「ルネスタ(R)錠」が不眠症患者の役に立てばと話した。

全国956名の医師にアンケートをとった「不眠症に対する実態調査」の結果でも、不眠症改善に期待される薬剤として、「入眠障害と中途覚醒の両方に効果が高い」ことへの支持が圧倒的に高い。

今後、「ルネスタ(R)錠」がどこまでこの期待に応えて、不眠症患者を減少させることができるかに注目が集まっている。

参加者からの質問に答える質疑応答の時間も設けられた

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