東京国立博物館、電通国際情報サービス、クウジットの3社は、東京国立博物館に来館するユーザー向けに、Androidアプリ「トーハクなび」を4月19日より無料公開すると発表した。

「トーハクなび」は、来館者の位置情報を利用して展示物の解説を行うアプリで、来館者は、自身のAndroid端末にダウンロードして来館すれば利用できる。

「トーハクなび」のスタート画面

また3社は、若年層を含め幅広い層に使用してもらうため、および来館者のすそ野を広げるための取り組みとして「『トーハクなび』共同研究プロジェクト」をスタート。「トーハクなび」の公開はその一環として行われた。なお、プロジェクトの期間は、2013年3月末までの1年間。

「トーハクなび」で実現したこと

「トーハクなび」では、「建物めぐりコース(30分)」、「日本美術入門コース(30分)」、「日本美術の流れコース(45分)」、「スペシャルコンテンツコース(45分)」、「法隆寺法宝物館鑑賞コース(30分)」の5つのコースが用意され、展示品の内容によってユーザーが選択する。このアプリは、昨年の1月に開発され、2011年1月18日~3月31日まで、利用できるスマートフォンXperia(SO-01B)とともに、入館者に無償貸与されていた。今回公開される「トーハクなび」は、これをベースに機能追加が行われている。

コース選択画面

「日本美術の流れコース」決定画面

5つのコースのうち、位置情報を利用しているのは「日本美術入門コース(30分)」、「日本美術の流れコース(45分)」の2コースで、これらのアプリでは、来館者が別の展示室に移動すると、自動的にその部屋の展示物の概要を説明してくれる。

展示物の説明画面。説明は画面と音声の両方で行われる

ときどきナビゲーションの表示もある

位置情報は、館内に設置された複数のWi-Fiのビーコン信号を利用して、位置を特定する。一般の無線LAN機器では、受信可能なアクセスポイントの一覧を表示する機能を有しているが、これはビーコン信号を利用したもの。「トーハクなび」では、複数のアクセスポイントのビーコン信号の強弱を利用して、三角測量のようにして位置を特定する。したがって、利用者は特別な無線LANの設定は必要なく、無線LANをオンにしておけばよい。利用しているアクセスポイントも特別なものではなく、一般に市販されているものを利用しているという。精度は3-5mということで、現在、展示室単位の特定で、展示物単位の位置特定は行っていない。

位置情報はクウジットの「PlaceEngine」を利用。クウジットは、「PlaceEngine」を開発したソニーコンピュータサイエンス研究所のメンバーが中心になり設立された会社

地図上で現在地を確認できる

東京国立博物館 教育課 課長 今井敦氏

東京国立博物館 教育課 課長 今井敦氏によれば、今回の「トーハクなび」の導入には、特別展に比べ、総合文化展(平常展)の来館者数が伸び悩んでいるという背景があるという。また、来館者からは「広すぎて何がどこにあるのかわからない」、「何からどう見ればよいのかわからない」といった意見が寄せられているという。

そこで、「はじめての総合文化展(平常展)体験を、より充実したものに」、「インタラクティブコンテンツなどIT技術を用いた『デジタルワークショップ』による鑑賞体験の深化」を目指し、「トーハクなび」を開発した。

また、「トーハクなび」は、スタンプラリーや、インタラクティブコンテンツとして、端末を振ると展示物の鈴の音色が聞けたり、蒔絵を体験できるコンテンツも用意されている。スタンプラリーではあらかじめ指定された展示室を訪れると自動的にスタンプが押され、スタンプを3つ集めると、景品(バッジ)がもらえる。

スタンプラリー

インタラクティブコンテンツ

プロジェクトでは今後、位置情報と連動した情報の配信や新たな体験コンテンツなどを提供し、来館者の豊かな鑑賞体験をデザインしていく予定だという。なお、iPhone版のアプリの開発については未定だという。

「『トーハクなび』共同研究プロジェクト」の今後