3月28日、空気清浄機や室内空気に関する中立性の高い情報を提供するために設立された室内空気向上委員会が、「ウイルス・花粉・ハウスダスト 本当に安心できる空気清浄機の選び方・使い方」に関するセミナーを開催した。

空気清浄機および室内空気に関する、中立性の高い情報を提供するために昨年設立された「室内空気向上委員会」。その「室内空気向上委員会」が3月28日、「ウイルス・花粉・ハウスダスト 本当に安心できる空気清浄機の選び方・使い方」と題したセミナーを開催した。

フィルター式空気清浄器との併用で効果をあげる室内換気

最初に池田耕一 日本大学理工学部建築学科教授/工学博士は「室内環境汚染とその予防法」をテーマに講演。

池田教授はまず、室内環境汚染の原因部質の一つである粒子状物質について解説。粒子が大きいものほど地面にすぐに落ちるが、小さいものは空気中に長い間浮遊している。

小さい浮遊物を取り除くには窓を開けるなどの換気は効果的だが、外気のカビを室内に入れてしまう可能性が大きいため、フィルター式の空気洗浄機などによるろ過と併用することが望ましいと述べた。

続いてアレルギー原因物質による室内環境汚染で、ダニによるアレルギー反応を起こしてしまうハウスダスト問題について解説。

高温多湿を好むダニは低温低湿の環境にすることで、ほぼ除去できると言う。そのほか、ダニを減らすには清掃が効果的で、最低でも週2~3回はすべきだとも。また、床材を板張りすることでダニを抑えることができ、畳にじゅうたんは最悪で、ダニを繁殖させるためにやっているようなものと話した。

そこで、布団の丸洗い乾燥や掃除機かけはダニの除去効果が高いそうである。

さらに、布団たたきは効果がないどころか、布団の中にあったダニの死骸(しがい)や排せつ物を表面に出してしまうことになりかねず、逆効果だと言う。

そして、空気清浄機を使用すれば空気中のアレルゲンを含む粉じん量は減るが、直ちに症状の改善につながるとも言えず、それなりの効果はあると言うにとどめた。池田教授は花粉についても解説。

いっぽう、花粉はアレルゲンと同じように比較的大きな粒子であるため、空気清浄機で処理しやすいが、「イオン」や「プラズマ」といった付加機能をうたうものに対しては大きな疑問を呈した。そして最後に節電のために換気や空気清浄機の使用を控えるべきでないと締めくくった。

「建築環境においては、すべての微生物を排除することは不可能であり、その必要もない」と語る池田耕一教授・工学博士

二人目の講師は、独立行政法人国立病院機構仙台医療センター・臨床研究部病因研究室長・ウイルスセンター長である西村秀一医学博士。同博士は微生物・ウイルス学の臨床研究の立場から「呼吸器感染症と科学的根拠に基づいた室内空気制御の工夫」について解説した。

インフルエンザなどのウイルスの感染ルートで、よく言われているのが接触感染と飛沫(ひまつ)感染と空気感染と呼ばれるもの。同博士によれば、後者を浮遊粒子感染と呼んだ方が現実的だと言う。接触感染は接触しただけで感染するようにイメージしがちだが、手を介して体内に入るという意味であり、手洗いをすれば完璧ではないものの、ほぼ防げるものだとも。

手洗いで防げないものが空気感染で、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、結核、インフルエンザなどがあり、手洗いで防げるインフルエンザは、ごく例外的なものに限られている。また、目の前でくしゃみをされるような場合を除いては、1m以内に落下するような飛沫では感染しないという。

自身の実験から、ウイルスは空中を浮遊しながら生きており、それらは時間の経過とともに”失活”していくもので、同じ湿度であれば、気温が高いほど”失活”しやすく、同じ気温であれば湿度が高い方が”失活”しやすいとの結論を導き出した。

呼吸器系ウイルス感染症、特にインフルエンザを専門に実験・研究を重ね、自らも空気清浄システムを開発する西村秀一医学博士

また、空中を浮遊するインフルエンザウイルスの除去にはフィルター付き空気清浄機によるろ過は一定の効果は見込めるが、イオンなど放電装置付きなどの付加機能タイプについては良い結果が見出せなかったとも。

さらに、マスクの感染を防御する効果は確かにあるものの、完璧ではないという。ウイルスなどを含む粒子を浮遊させるリスクを下げる効果が絶大であり、マスクを最もすべきなのは患者や疑い患者であり、それが周囲の感染リスクを大きく引き下げることにつながるとのことだった。

今後も室内空気向上委員会では、こうしたセミナーを開催し、信頼できる正しい情報を発信していく。

室内空気向上委員会では、氾濫する商品情報の中から快適な室内空気を手にしてもらうため、このようなセミナーを随時開催している

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