米Appleは3月19日(現地時間)、今年後半に株主への配当を再開し、また自社株買いプログラムを開始すると発表した。配当の実施は1995年以来17年ぶりのことになる。

同社はまず、2012年7-9月期に1株あたり2.65ドルの四半期配当を行う計画だ。年間配当利回りは1.8%で、これはコンピュータ関連の企業としては平均的な水準。Microsoftは2.5%、Intelは3%、Hewlett-Packardは2%、IBMおよびCiscoは1.5%となっている。

自社株買いプログラムは、2012年9月30日に始まる同社2013年会計年度から着手し、3年をかけて実施する。買い取り枠は最大100億ドル。「将来の社員への株式付与や社員の株式購入プログラムによる希薄化の解消を主目的とする」としている。

iPod、iPhone、iPadと立て続けにヒットを飛ばし、またMacも順調に成長しているAppleは、潤沢な手元資金を蓄えている。同社はこれまで、革新的な製品やサービスを提供し続けることで価値を生み出すという方針を明言し、利益を配当よりも研究開発やビジネス戦略の投資に回してきた。企業買収についても慎重で、広く浅くではなく、成長戦略に適う分野に絞り込んで集中して行ってきた。しかしながら、手元資金が2011年末時点で976億ドルにまで膨らみ、資金の活用や利益の株主への直接的な還元を求める声が強まっていた。

CEOのTim Cook氏は「研究開発の拡大、買収、直営店の拡大、サプライチェーンに対する設備投資や戦略的な資金投入、そしてインフラストラクチャの増強など、これまでも手元資金の一部を有効に投資してきた」と指摘、「こうした成長戦略を満たした上で、なお十分な資金が残るため、配当と自社株買いプログラムを開始する」と説明した。今後も製品・サービスの革新性への投資を最優先する姿勢に変わりはなく、配当や自社株買いプログラムについては定期的に見直しながら実施していくという。

なおアナリストや報道関係者を対象にしたカンファレンスコールで、Cook氏は16日に発売された新しいiPadの売れ行きについてコメントし、具体的な数字は明かさなかったものの「記録的な週末になった」と述べた。