東京工業大学(東工大)は3月14日、バーチャルリアリティ(VR)空間の物体の力触覚を正確に提示できるハプティックインタフェースの最新型「SPIDAR-I」(画像)を開発したと発表した。開発は、東工大精密工学研究所の佐藤誠教授らの研究グループによるもの。実物は3月15日・16日に日本科学未来館で開催された「インタラクション2012」で発表され、デモ展示が行われた。

東工大・佐藤教授らが開発したハプティックインタフェースの最新モデルSPIDAR-I

近年、計算機性能の飛躍的な向上により、3次元VR空間をリアルタイムにシミュレートすることが可能になってきた。そこで、3次元空間内の物体と力覚インタラクションができるハプティックインタフェースが注目され、研究が進められている。

ハプティックインタフェースとは、位置入力だけでなく力情報のフィードバック機能を有する機器を指す。バーチャル世界で物体を自由に操作し、その物体の重みや障害物と衝突したときの感触などをユーザに提示することができるものだ。

これらのデバイスは、手術や工業製品の組み立てにおける訓練からエンターテイメントなど幅広い分野で使用することが可能なことから、各方面より注目されている状況だ。

佐藤教授らは長くにわたってハプティックインタフェースの開発に取り組み続けており、20年以上も前になる80年代後半には基本となる4本のストリングによる張力駆動型ハプティックインタフェース「SPIDAR」を提案した。

SPIDARは、グリップ、フレーム、ストリングで構成された張力駆動型ハプティックインタフェースだ。並進3軸及び回転3軸の合わせて6自由度の位置・姿勢計測と力覚提示が可能な機能を持つ。

その後、計測及び力提示の自由度を並進と回転の6自由度に拡張した「SPIDAR-G」を開発。これは8本の高剛性ストリングの端をグリップ(把持部)と結び、もう一方の端を高性能DCモータと結んで、モータの制御により、力触覚情報を再現すると同時に、モータに取り付けたロータリーエンコーダによりストリングの長さを計測しグリップの位置・姿勢を計測するという仕組みを持つ。

しかし、ハプティックインタフェースがよりリアルな感覚をユーザーに与えるためには、位置・姿勢・力覚計算の精度を十分に高くする必要がある。SPIDARはストリングを使用するという特性上、その配置・構造が忠実性に影響を与えてしまうという弱点があった。

そこで、SPIDAR-Gを基本に、位置・姿勢計算の忠実性と力覚提示の高解像度性を向上させる最適設計を行い、新しいインタフェースの構造を求めたのである。

新しく開発したハプティックインタフェース「SPIDAR-I」は、従来のSPIDAR-Gに比べて、体積にして約30%縮小したコンパクトさが特長の1つ。構造の最適化による位置・姿勢の計測精度と高解像度の力覚提示性能の向上により、従来のシステムと同等もしくはそれ以上の位置・姿勢計測と力覚提示が可能となった。

特に、グリップの内側にストリングが配置されているため、操作性が極めて優れている。以上ことからデスクトップ環境のハプティックデバイスとしての大きな可能性を秘めていると、佐藤教授らはコメントしている。