凸版印刷は、紙にゼオライトを高密度で充填し、放射性物質の吸着を可能としたゼオライト機能紙を開発。検証用のサンプル出荷を2012年3月上旬から開始する。

ゼオライトは、アルミノ珪酸塩のうち結晶構造中に大きな空隙を持つもので、イオン交換材料や吸着材料などとして幅広く使われている天然鉱物。放射性物質であるセシウムを吸着する機能を持つことも知られている。

2011年3月11日の東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故により、大量の放射性物質が飛散したが、この対策として政府は「除染に関する緊急実施基本方針」を作成。除染に必要な技術情報を継続的に提供することになっている。この「除染技術カタログ」には、放射性物質であるセシウムを吸着する吸着剤としてゼオライトが取り上げられている。

また福島県では、農地や森林などにおける放射性物質の除染に関する基本方針を策定。この中にも、水田の除染についてゼオライトを散布する方法が盛り込まれている。しかし、その一方で、従来のゼオライト散布では均一に撒くことが難しく、また施工の際に大変な人手や手間がかかるという課題があった。

今回開発された機能紙は、高密度の充填によりゼオライト自体の特長を維持したまま加工性の向上を実現したと言う。同社の発表では、特長として「紙の形状であることから、施工しやすい枚葉やロール原反での提供が可能」、「断裁や折りたたみなどの加工が容易」、「均一な施工が可能。また巻き取ることにより容易な回収も可能」といった点を挙げている。

ロール原反での提供が可能となったことで、対象の土地などに対して均一に、かつ簡単に敷き詰めることができ、施工の手間が大幅に削減されると言う。また、ロール原反の状態で備蓄しておけば、緊急事態の際などにスピーディに施工することが可能となる。

凸版印刷では、今後のサンプル提供により、大学や企業、自治体ほか様々な研究機関と効果検証を進め、放射性物質の吸着性能の実証評価を行なうとともに、用途開発を進めていく。さらに、早急な実用化、量産化を図ることで、今後の除染事業への貢献を目指す。

なお、原材料のゼオライトには、三井金属資源開発による国産の天然ゼオライト「イワミライト」を使用。機能紙の開発も同社の支援をうけて行なわれた。また、製造に関しては、凸版印刷と多くの事業分野で協業している新巴川製紙の協力で行なう予定。