東北大学は3月7日、これまで最終氷期には氷河に覆い尽くされていたと考えられていたスカンジナビアを、北方針葉樹林たちが生き延びていたことを、DNAの分析などにより明らかにしたと発表した。成果は、東北大学大学院農学研究科の陶山佳久准教授と、ウプサラ大学(スウェーデン)やコペンハーゲン大学(デンマーク)などとの国際共同研究によるもので、詳細な研究内容は3月2日付けの米科学雑誌「Science」に掲載された。

これまでの一般的な常識では、最終氷期のスカンジナビアは氷河に覆い尽くされていたと考えられており、現在分布するマツやトウヒなどの北方針葉樹は、氷河期以降に南あるいは東ヨーロッパから分布拡大したものだと理解されてきた。

しかし、国際共同研究グループが湖底堆積物から得られた古代DNAや植物遺体などを分析したところ、この地域の一部に最終氷期から北方林が生き残っていて、現在の分布の祖先になったことが示された。

今回の研究では、まず現在ヨーロッパに広く分布しているトウヒの仲間のミトコンドリアDNAのタイプ(系統)の地域分布を調べ、スカンジナビアに特有の希な系統が存在することを見出した。

次に、この地域の湖の堆積物から得られた古代DNAの分析によって、この系統がおよそ1万300年前に存在していたことがつきとめられたのである。さらに、別の湖から得られた古代DNAおよび植物遺体の分析によっても、およそ2万年近く前からマツやトウヒがこの地域に分布していたことが明らかにされた。

前述したようにこれまでの常識では、スカンジナビア半島は最終氷期の時点で氷河に覆われており、そこに現在分布している北方針葉樹は分布していなかったと考えられてきた。しかし今回の研究の成果は、最終氷期においてスカンジナビア半島に氷河に覆われない"避寒地"があり、北方針葉樹がそこに生き残っていたということを示している。

このことは、これまでの氷河時代からの植物の分布に関する常識を覆すものであり、気候変動下における樹木の分布・生残に関して新たな視点を提供するものとして注目されてる次第だ。