2006年以来、毎年春に米ネバダ州ラスベガスで開催されていたMicrosoftのWeb開発者カンファレンス「MIX」が、今年2012年は開催されないことが正式にアナウンスされ話題になっている。同社はその他の開発者イベントの実施についても明言しておらず、今年後半に改めてアナウンスを行うとしている。

同件はMicrosoftが1月24日(現地時間)に公式Blogの中で発表している。通常であればすでに日程が発表されて申し込み受付がスタートしている時期であり、今回のMIXキャンセルについては特別の驚きはない。同社は昨年2011年9月に「BUILD」という開発者カンファレンスを米カリフォルニア州アナハイムで開催しており、「Windows 8」に主眼を置いた開発者会議でありながらも、その内容は「PDC」「WinHEC」「MIX」といった同社が過去に開催してきたイベントを総合したようなものだった。おそらくは、今後は年次開催になるかも含めて開発者向け総合イベントの回数を減らし、オンラインでの情報提供といった、より低コストで多くの開発者やパートナーにリーチできる方法を模索するものとみられる。

米Microsoftの開発プラットフォームエバンジェリストでジェネラルマネージャのTim O’Brien氏はMIX中止を伝える投稿の中で「WebとWindows開発者の間にすでに垣根がなくなりつつあること」「製品発売前の重要な時期にわれわれの一線の内部エンジニアらをイベントの準備と実施で借り出されてしまうことの損失」を2つの理由として挙げている。また特定の場所に人を集めるイベント以外の開発者のコミュニケーション手法が多様化するなか、メディア関係者を含むイベント参加者らが「イベント参加疲れ」を訴えるケースも増えており、いまいちどMIXを含む開発者イベント全体について見直す時期に差し掛かったと説明している。

表上の理由は「双方合意のうえ」という点を強調しているが、実際にはイベント開催にかかる膨大な費用や手間に対して、その費用対効果が低いことが理由の1つと考えられる。数年ほど前、米Microsoft幹部の1人は「数万人規模のイベント実施は場所の選定とホテル確保だけでも難しい」とイベント準備の難しさを訴えており、それが年々厳しくなっていく様子がうかがえた。実際、2010年秋に開催されたPDCは場所を米Microsoft本拠地の米ワシントン州レドモンドに設定し、参加者もわずか数千人程度と絞り込んでいる。またイベント自体も簡素なものが主流となり、以前は遊園地やホテルの宴会場を借り切って行われていたようなパーティが開催されることもなくなってきた。一方でWeb上で公開されるリソースは年々充実しており、カンファレンスの各セッションの多くも実施から2-3日が経過すれば、すべての資料や講演の動画がアップロードされて誰もがチェックできるようになっている。

以上を考えれば、今後のMicrosoftの開発者イベントは「開発者との最低限のコネクションを維持する」ことを主眼に行われる方向にシフトするものと思われる。また前述のように「製品開発時期にエンジニアの時間をイベントに割かれる」ことを避けたいともしており、少なくともWindows 8がリリースされるとみられる今秋までは何かが実施される可能性は低そうだ。Windows 8の発売とともに、夏以降の同社の発表に注視しているといいだろう。