KDDIは6日、災害時に出動する車載型移動基地局の運用コンテストを初めて実施し、その様子を報道機関に公開した。同社の全国のテクニカルセンターのうち、4事業所の選抜メンバーが参加し、実際の車載型移動基地局を設置しての訓練となっていた。
車載型移動基地局は、災害時に基地局の倒壊や停電などで、携帯電話サービスが提供できなくなった場所に派遣され、臨時でサービスを提供するためのもの。KDDIの場合、イベントなどの人が集中する場所での臨時基地局に車載型基地局は派遣しないそうで、災害時にのみ使われている。KDDIの保有する車載型基地局は15台で、大型車7台と小型車8台を持っている。大型車で90人、小型車で50人の同時通話が可能になり、大型車では半径2kmの範囲をカバーできるという。
3月11日に発生した東日本大震災では、11日中に車載型基地局が出発し、最終的には15台全車が出動して被災地でサービスを提供。障害エリアが広く、長期間にわたったため、テクニカルセンターの「ほとんど全員」(KDDI)がローテーションで移動基地局を運用。震災中は、雪がアンテナに積もって機能が停止したり、電源が故障して移動電源車を用意したり、余震があったりと、困難な状況も続いたが、臨時とはいえサービスが提供しつづけたという。震災時は車載型だけでなく、通常の乗用車に搭載して運べる可搬型の移動基地局、衛星フェムトセルも使い、基地局復旧までの間、携帯サービスを提供したほか、停電した基地局への電力供給などを目的とした移動電源車も派遣された。
移動基地局は、2010年10月下旬の鹿児島県の奄美大島における豪雨災害、今年9月の台風12号でも派遣されている。しかし、大型車では入れないような場所もあったことから、10台の可搬型基地局を27台まで増やし、車載型も今年度中に5台追加する予定だ。
車載型移動基地局では、自動車用とは別のガソリンで稼働させ、満タンで18~24時間の連続稼働が可能。連続稼働する場合はガソリンの補給が必要になるため、給油拠点を設け、ガソリンを優先的に確保できるような取り組みをしているそうだ。
今回の公開訓練では、車載型基地局を所定の場所に移動し、基地局の設置を開始。大型車の場合、基本は4人1チームで、それぞれが担当を決め、実際に基地局の稼働までの訓練が行われていた。最も設置スピードが速かったのは名古屋チームで68分だったが、全体では広島チームが総合優勝。広島チームは、最終的に携帯充電サービスの設置まで行うなどが評価されていた。
KDDIでは、今後も公開訓練を実施する予定で、震災時に、復旧までの間、早期に通信サービスを提供できるように準備を進めていく考えだ。
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