海洋研究開発機構(JAMSTEC) 地球内部ダイナミクス領域の冨士原技術研究主任らの研究グループは、東北地方太平洋沖地震震源域近傍における海底地形変動の検証を実施した結果、震源近傍から海溝軸に至る領域が東南東方向に約50m、上方に約7~10m移動したことを確認したと発表した。同成果は米科学誌「Science」に掲載された。

図1 調査域海底地形図(図中の黄色い枠が調査測線を示す。×印が2011年の東北地方太平洋沖地震の本震の震央位置)

同研究グループはこれまでにも1999年と2011年のデータの比較を行い、海底地形の変動量を報告していたが、今回、2011年3月11日以降のデータに2004年に実施した海底地形調査データも加え、海底地形の変動量を評価した。

図2 2011年の調査測線に沿った海底地形図。赤△は海溝軸の位置、青△は東北側(東北日本弧側)の傾斜変換点の位置を示し、海溝軸へ向かって急傾斜になる

図3 2004年と1999年の海底地形の比較。顕著な海底地形変化が見られない。緑や黄色の部分は誤差(海底地形データは、水深に対して0.5%程度の誤差を持つ)

図4 2011年(地震後)と2004年の海底地形の比較。東北側(東北日本弧側)が全体にわたり海底地形が上昇している(点線・実線で示される部分)。そのうちの実線で示した部分(青△より海溝側)は、起伏が大きく変位量が読み取りやすいため移動を確認できた領域。図5の海底地形の比較(既報)と同様の傾向が見られる。海溝軸付近に黄色の星印で示した地形変化(凹凸地形)は、海底地すべりにより生じたと推定される

図5 2011年と1999年の海底地形の比較(既報)。詳細に検討した結果、移動量(計算値)は東南東に56m、上方に10mと計算された。また、図3~5を比較した結果、大きな海底地形の変動は2004年以降に生じたことが確認され、震源近傍から海溝軸に至る領域の海底地形の変動量は、東南東方向に約50m、上方に約7~10mと推定された

その結果、1999年から2004年では海底地形の変化は認められないことを確認したほか、今回の地震後の観測では、震源近傍から海溝軸に至る領域が、海溝の沖合側(太平洋プレート側)を基準とした相対値に対し、東南東方向に約50m、上方に約7~10m移動したことを確認したという。