日本アイ・ビー・エムは11月30日、全世界1,700名以上のマーケティング担当役員(CMO:Chief Marketing Officer)への対面インタビューによる調査結果「IBM Global CMO Study 2011」を発表した。これに伴い、同調査に関する記者説明会を開催した。

日本アイ・ビー・エム パートナー グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・グループ 浅野智也氏

説明会では、パートナー グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・グループの浅野智也氏が同調査について説明を行った。同氏によると、同調査の参加者1,734名には、日本からの参加者は68名が含まれているという。

同氏は初めに、マーケティング担当役員が準備不足と感じている項目について解説。グローバルで最も多かった回答は、ビッグデータと呼ばれている「データ量の飛躍的増加」で、これに「ソーシャルメディア」「チャネルと伝達手段の増加」「顧客の人口構成の変化」が続く。

この結果に対し、日本で最も多かった回答は「ソーシャルメディア」で、これに「ROI」「データ量の飛躍的増加」「財務的制約」と続く。グローバルと比べて、コスト的要因が強いのが特徴となっている。

同氏は「顧客の人口構成の変化」について、「グローバルでは今後、年間消費力が300ドルから3,000ドルの富裕層候補者と呼ばれる層の人口が増えることが見込まれる。よって、これらの層の攻略がビジネスの成功のカギとなる」と説明した。

同社はこうした企業のマーケティング活動の課題に対処するため、「個客に価値を提供する」「永続的な関係を育成する」「価値をとらえ、成果を評価する」に取り組むべきと提言する。

同氏は調査データを引用しつつ、「個客への価値提供」について「『顧客』ではなくあえて個々の客を指す『個客』という言葉を使っている。現状では、多くのCMOが戦略構成にあたって、マーケットを理解することに注力している。しかし先の調査で、顧客の人口構成が変化しつつあると説明したように、これからはマーケットではなく個客を理解することが大切となる」と説明した。

同社は「個客への価値提供」において「データ量の飛躍的増加」への対応が必要になるとしているが、グローバルのトップの回答は「テクノロジーへの投資」であるのに対し、日本のトップの回答は「必要なスキルの再考」となっている。さらに、マーケティングに新たなテクノロジーを活用する際の障害/障壁についても、日本では「ユーザーのスキル不足」や「ITスキル不足」という回答が多く、同氏は「日本のマーケティング業務では、人に起因する問題が挙がりやすい。だが、裏を返せば、『人がいない』といったことが、新たな取り組みができない理由になっているのかもしれない」という見方を示した。

「永続的な関係の育成」については、大多数のCMOが顧客情報を分析する際にデータを取得・活用しているものの、取引管理にしか使っておらず、気づき/学習、関心/欲求、使用/享受といった顧客との関係性の維持・強化に必要なデータの取得・活用が必要だという。

加えて、同氏は顧客との永続的な関係を育むうえで、「企業文化の醸成」が重要だと説明した。実際には、「社員に企業文化を理解/実践させる」ことに労力が必要だと回答している日本のマーケティング担当役員の割合は78%に上っている。

「価値を捉え、成果を評価する」ことを実現するために必要なこととしては、「ROIを通じて説明責任を果たすこと」と「CMOに必要とされるスキル・能力を認識する」ことが挙げられている。

同社では「個客に価値を提供する」「永続的な関係を育成する」「価値をとらえ、成果を評価する」を実現するソリューションを用意しているが、同調査の結果公表に合わせ、企業のマーケティング強化を支援するための新事業モデルの策定支援、マーケティングとサプライチェーンの連動に関する診断、EC基盤の変革支援策定などを行うコンサルティング・サービスを揃えた「Smarter Commerce ジャンプスタート・プログラム」が発表された。

「Smarter Commerce ジャンプスタート・プログラム」の概要