独Rittalの日本法人であるリタールは11月30日、日本市場における成長戦略を発表。ITインフラストラクチャおよび自動車、工作機械の分野へ注力していくことを明言した。

Rittalの上級副社長で、アジア太平洋地域および中東・アフリカの営業統括を担当しているヘルムート・ビンダー氏

同会見に出席したRittalの上級副社長であり、アジア太平洋地域および中東・アフリカの営業統括を担当しているヘルムート・ビンダー氏は冒頭、「Rittalは全世界において、2015年末までに年30億ユーロの売り上げを目指す」と宣言。それを実現するためにはアジア、特に日本および韓国、中国、インドでの成長が不可欠であることを強調した。

リタールの代表取締役社長である高村徳明氏

その日本市場向けの戦略について、9月1日よりリタールの代表取締役社長に就任した高村徳明氏は、「日本の市場すべてをリタールのスタッフでカバーするにはリソースが不足している。少なくとも2012年は産業分野では自動車と工作機械にフォーカスしてカスタマの問題を解決する手助けをしていく。例えば自動車の製造現場では耐腐食性やオイルが飛び散るような状況での耐環境性が求められる場所などで我々の製品は性能を発揮できる。すでにドイツの自動車メーカーでは、すべて従来品比45%の低消費電力化が可能な最新型クーラー製品へと置き換えすることで、多大な電力消費の抑制に成功している」とし、制御機器を扱っている代理店と連携し、全国でメンテナンスの提供ができるような体制の構築を進めているとした。

リタールが提供している製品群と産業分野における適用領域

一方のITインフラ分野に対しては、「最大のポイントはラックで、搭載する機器への要求がクラウドの進展で変化してきた」とする。そのため同社でもあらゆる機器を統合したAll in Oneの「Smart Package」というソリューションの提供を進めている。「サーバラックといっても、UPSやインテリジェントPDU、ペルチェクーラー、消火装置、内部監視用のセンサなどが必要となる。また、それらをネットワークで接続し、ビルディング・マネジメント・システム(BMS)と連携させる必要も出てきている。我々はこのすべてをソリューションとして提供できるメーカーであり、日本ではリタールはボックスメーカーと思われているが、もはやソリューションベンダであることを強調したい」と、単なる設備機器メーカーから変化しているとし、他社にはないユニークなソリューションなども含めて、「RIMATRIX5」という名称で2012年より拡販を進めていくとする。

単なる設備ではなくトータルソリューションを提供することで、新たなビジネスの獲得を狙う。その核となるのが、全部入りのラック。右スライドの「ROBO(Remote Office/Branch Office)」は、遠隔地にある企業の本社と支社や物流倉庫などのビジネス環境を指す。今後、クラウドの発達で支社や倉庫でもサーバが必要になってくると、普通のラックを倉庫などに持ち込めば、すぐに埃まみれになり故障する可能性が高まる。そうした場所や遠隔地でも安全にサーバやストレージを運用したいというニーズは日本でもあるはずで、同社でもパートナーを探しながら日本でもビジネスとして展開していきたいとしている

特に「消化システム」、「耐火ラック」、「コンテナ型データセンター」の3つの需要が今後伸びていくとの見方を示す。消化システムはラックの内部を消化するというもので、3Mの濡れても電気を通さない次世代消化剤を用いることで、サーバなどの高価な機器を守りつつ消火が可能であり、すでに公共機関での納入が決まっているという。

消火システムの概要。3Mの次世代消火薬剤「NOVEC1230」を用いることで、電気機器をショートさせずに火を消すことが可能だ

耐火ラックは、そうした消火システムなどの機能を耐火金庫のようなラックに入れることで、火災時などでも、ラックの内部から外部に、また外部から内部への火の侵入を防ごうというもの。「耐火ラックは外から火を当てても70℃以上に中がならない仕組みで、防塵防滴性能もIP55規格に適応している。耐火ルームを作ろうと思うと、非常に膨大なコストが必要だが、ラック単位で耐火性があるので、安価にシステムを守ることが可能になる」と説明する。

耐火ラックのラインアップ(左)と実際の耐火ラック(右)。写真のラックは正面からのもの。ラック上部がクーラーで、正面からエアーを流し、背面でそれを再びクーラーに戻す。ラック上段には消火システムが搭載されている。フタを閉じると耐火性(耐火性能F90)、防塵防水性(IP55)、高セキュリティ(セキュリティクラスWK2)を実現することが可能となる

また、データセンターは最大電力を想定してサーバルームの冷却機構の性能などを決定するが、段階的にサーバを入れていったりすると何年もその最大電力を消費する機会まで到達しない。「米国のデータだが、平均的には5年経っても40%の使用量にも達しない。そうすると、そうした冷却設備への投資などは過剰投資ということになる。我々のラックを用いればこうした巨大な部屋ごと冷却という考えを辞めて、ラック単位での冷却が可能になり、スペースも自由に使えるようになるし、UPSとも組み合わせることでTCOを下げることも可能になる」と、これからのデータセンターでのサーバの配置の考え方を変えたいとするほか、クラウドの進展により工場や物流拠点などの埃などが舞う過酷な環境下にサーバを設置する必要が出てくることが予測されており、そうした場所でのサーバ活用ニーズに見合ったサービスを含めたソリューションを提供していきたいとした。