京都大学(京大)は、カニ殻から、フレキシブルで熱膨張の小さい透明材料を製造することに成功したことを発表した。同材料は、カニ殻のナノ構造を利用したもので、Roll to Rollプロセスで製造するフレキシブルディスプレイや太陽電池の透明基板への応用が期待されるという。同成果は同大生存圏研究所生物機能材料分野の矢野浩之 教授およびMd. Iftekhar Shams日本学術振興会外国人特別研究員らによるもので、英国王立化学会誌「Soft Matter」(オンライン版)に掲載された。
カニやエビの殻は、鉄筋コンクリートの様な構造をしており、この場合の鉄筋は幅20~30nmの高強度、低熱膨張のキチンナノファイバーであり、コンクリート成分に相当するのは、タンパク質や炭酸カルシウムとなる。
研究グループでは、カニ殻から酸で炭酸カルシウムを、アルカリでタンパク質を取り除き、出来た空隙に透明樹脂を染みこませると、カニ殻が透明になることを発見した。これは、可視光の波長(400~800nm)より十分細い構造体(ここではキチンナノファイバー)は、光の散乱を生じないため、透明樹脂と複合しても、その透明性を損なわないことによるものだという。
この「透明なカニ」から着想を得て、カニ殻粉末から同様の処理でタンパク質、炭酸カルシウムを取り除き、水中で撹拌後、濾紙でろ過してカニ殻粉末のシートを作製したところ、シートはミリ単位の粉末が分散した、外観的には不均一な紙の様な状態となった。さらに、そこに透明樹脂を注入すると、ナノ構造体のカニ殻粉末は完全に見えなくなり、不均一なシートは透明が形成されたという。
この透明シートは、高弾性、低熱膨張のキチンナノファイバーを約20%含むため、ガラスの30倍近くある透明樹脂の線熱膨張(熱による伸び縮み)が、有機EL照明の透明基板に使用可能な、ガラスの3倍程度の値にまで減少した。また、温度が変化しても透明性は変わらず、キチンナノファイバーの量を増やすことで、ガラス相当にまで線熱膨張を下げることも可能だという。
さらに、同様の効果は、エビ殻でも得られており、これにより、未利用のバイオ資源から簡単に高性能の透明材料を創ることができることが判明したこととなった。生き物の構造は、多くがカニ殻やエビ殻と同様に、ナノ繊維で補強されたナノ構造体だが、木材や稲ワラも同様であるため、研究グループでは将来的には、こうした植物資源からも、カニ殻シートと同様に透明で低熱膨張のガラスに替わる材料を簡単に製造できる可能性があるとしている。
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