名古屋大学(名大)、大同大学および中部地方の中小企業連合体によるグループである中部地区小型衛星開発連合は、50kg級の小型人工衛星「ChubuSat-1」の開発を行っていることを発表した。実用化できれば従来の1/100以下という安い費用で宇宙からの観測が可能になり、第1号は平成24年度下半期(平成24年12月以降)に打ち上げるとしている。

ChubuSat-1は、日本の航空宇宙産業の中核地域である中部地方を活動拠点とした産学の両組織が協力し、同様に中部地方を代表する航空宇宙メーカーの三菱重工業からのサポートも受けることで、開発を進めている。

将来的には、小型人工衛星の量産化により費用を下げることで、衛星による宇宙・地球環境の観測が容易になり、地上からの観測と組み合わせることでより包括的な宇宙・地球環境の研究を可能にするなど、「宇宙理に要による大学の研究活動の拡大」を見込んでいるとした。

また、これまで中部地方の企業が航空宇宙分野での製品開発を通して培ってきた各種加工技術を活用して、独自の衛星を開発することで、地域内の気運を盛り上げると共に、日本の航空宇宙産業の中心地として広く外部にアピールすることにより、中部地方中小企業の活性化を目指すとしている。

ChubuSat-1の名称は、そうした思いが込められた、「中部地方衛星1号機」という意味だ。

衛星の構成は、重量は前述の通りに50kgで、一辺約50cmの立方体形状をしている。3面に太陽電池パネルを搭載し、観測機器としては可視光および赤外線カメラを搭載するほか、地上との通信手段としてアマチュア無線通信機を搭載しているのが特徴。

可視光カメラの分解能は10m程度で、建物の識別が可能なレベルだ。赤外線カメラは波長7.5~13.5μm帯に感度があり、大気中の二酸化炭素量や地表の温度の大まかな測定を可能としている。

また、予定しているサービスとしては、可視光および赤外線カメラを用いた、地球上のさまざまな地点での大気中の二酸化炭素量を定期的に測定し、地球温暖化の理解に役立てるということが1つ。衛星運用の障害となるスペースデブリ(宇宙ゴミ)のデータベースを作成し、今後の衛星運用に役立てるというのもある。さらに、上空から地上の施設の温度を測定できることから、災害などで隔離された施設の稼働状況の確認も可能だ。同じく災害関連では、災害発生時に被災領域の定期的な遠隔モニタリングも行える。そのほか、地上との通信手段としてアマチュア無線通信機を搭載していることから、一般のアマチュア無線ユーザに対するメッセージ中継サービスも提供するとした。

画像1。ChubuSat-1の機械環境試験用プロトタイプ