富士通研究所は11月7日、CPUから発生する廃熱を利用して、サーバルームの冷却に使用する冷水を製造する技術を開発したことを発表した。同成果は10月28日より開催された電子機器・エネルギー技術の国際学会「The 2011 International Conference on Power and Energy Engineering」にて発表された。

一般的な工場施設では、冷却のために電気もしくはボイラーなどの熱エネルギーで冷水を製造している。しかし、グリーン化の観点から、そうした取り組みはエネルギーの消費が大きいため、高温廃水を熱源として用いて冷水を製造しようという試みが進められている。データセンターでも、CPUによる熱の有効利用として冷却用冷水の製造が考えられているが、これまで冷水を連続的に製造するためには水温が65℃以上で安定しているという条件が必要であり、それよりも低く、かつCPU処理の負荷変動で温度が一定にならないIT機器の廃熱の適用は難しいと考えられていた。

今回、廃熱を利用した冷水発生装置として、吸着材の水分吸着力によって水を蒸発させ、その際に周囲の熱を奪う性質を利用した吸着式ヒートポンプを利用。連続的に冷水を製造するためには、室温における吸着材への水の吸着と、廃熱を利用した乾燥のサイクルを繰り返す必要があるが、新たな吸着材を開発し、室温における水の吸着性能、および、55℃での乾燥性能を向上させることで、55℃の低温動作を可能にした。

また、CPUの温度は負荷により変動することが、連続的な冷水製造の実現への課題となるため、CPUの負荷に合わせて、廃水の流量を制御することで、冷水発生装置に供給される廃水の温度を40℃から55℃の範囲に保つ技術を開発した。

この2つの技術により、冷水発生装置へ入力された廃熱量を100%としたとき、最大で60%の熱量に相当する量の冷水出力が得られることを確認。これにより、例えばCPUの廃熱を利用して製造した冷水を空調装置で使用することにより、データセンターでの空調消費電力を最大で約20%削減することができることから、サーバラック1台あたり、年間最大で1.2万KWh、杉の木360本分のCO2の削減が可能になるという。

なお、富士通研究所では2014年ごろのデータセンターでの適用を目指して、大規模化、スペース効率の向上、信頼性の向上などの技術開発を進めていくほか、工場、オフィスビル、太陽熱発電システムなど、データセンター以外の用途において利用されていない低温廃熱への活用を目指すという。

開発技術の概要