ルネサス エレクトロニクスは10月31日、2012年3月期中間期の決算概要を発表した。売上高は、前年同期比23.3%減の4505億7600万円、営業損益は前年同期の7億2900万円の黒字から292億300万円の赤字へと赤字転落となったほか、経常損失は同78億200万円から333億3500万円へ、純損失は同412億4100万円の損失から420億1100万円へ、それぞれ赤字幅が拡大した。

2012年3月期第1四半期および第2四半期の業績

ルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏

また、同第2四半期の業績は売上高が前年同期比18%減の2433億円、半導体売上高が同17%減の2182億円、営業損失は売り上げ増および那珂工場の生産再開による生産増に伴う利益の増加などがあったものの同112億円の減少となる101億円の赤字、経常損失も同72億円の悪化で131億円の赤字、純損失も同6億円の悪化の88億円の赤字となった。ただ、同社代表取締役社長の赤尾泰氏は、「半導体売上高は、前四半期比で19%増収であり、前回の予測からは若干下回るが、為替影響も考慮するとほぼ計画通りに推移した」との見方を示すほか、「営業損益、純損益ともに赤字だが、それぞれ売上増に加え、研究開発費効率化などの100日プロジェクトの効果も寄与した結果、前四半期からは大きく改善している」と構造改革がうまく進んでいることを説明する。

事業別の半導体売上高は、マイコン事業では、汎用向け自動車向け共に、震災影響を受けた供給力が回復し、前四半期比で13%増(前年同期比では8%減)の875億円となった。特に自動車向けマイコンは、前四半期比で20%の売り上げ伸長が見られたという。

また、アナログ&パワー半導体(A&P)については、パワーデバイスとアナログICにおいて、国内外の自動車メーカー向け需要が伸び、前四半期比で7%の売上増(前年同期比20%減)の672億円となった。

さらに、SoC事業については、第1四半期に那珂工場被災の影響を大きく受けた自動車などの分野は、那珂工場の生産再開に伴い、前四半期比で売上増となったほか、民生向けは、前四半期比で売り上げが増えたものの、TV向けなどでは想定を下回る低い伸びとなり、事業全体の売上高は前四半期比51%増(前年同期比24%減)の632億円となった。

マイコン、A&P、SoCそれぞれの事業の概況

こうした状況から、同社では「世界的な景気減速や為替影響を考慮した結果、通期業績は当初計画の1兆190億円の売り上げから9,680億円へと下方修正をした」(同)とするも、営業損益、経常損益、純損益の見通しは、すべて当初計画からはの変更はしておらず、当初予定の下期の当期黒字化を達成するべく、100日プロジェクトによる生産・研究開発費面での効率化と、追加的な費用削減施策を推進していく方針としている。

2012年3月期通期業績を下方修正も下期の黒字化目標は変更せず

具体的には、下期の半導体売上高は上期比17%増の4688億円で、事業別ではアナログ&パワー半導体とSoCが10%台前半の伸びを想定するほか、マイコンは国内自動車メーカーの増産向け需要拡大が予測され、同20%台半ばの伸びを想定している、と説明している。

なお、同社では安定的に利益を出せる事業体質を目指し、事業・生産構造対策を継続して推進していくとしており、生産構造対策としては、前工程におけるウェハ大口径化と先端プロセスを中心とした海外生産委託の拡大。後工程では、海外の自社工場とサブコンの活用拡大。そして、事業構造対策と生産構造対策にまたがる具体例としては、10月31日付で最終契約を締結した村田製作所へのパワーアンプ事業譲渡などを挙げた。

このほか、安定的な利益体質を目指した費用効率化として、研究開発費効率化に向けて研究開発費比率を2013年度に全社売上比16%にする目標とするほか、設備投資の継続的な効率化も行うことで、減価償却費も減少方向にあり、2012年度も震災復旧投資も含め、設備投資額は当初計画の485億円から425億円に抑制する予定だとしており、今後、さらに事業構造の変革を進めることで、設備投資を現状レベルで推移させていくことで、2014~15年度には減価償却費も設備投資額レベルに低減していくとしている。

事業構造をSoCからマイコンとA&Pへシフトさせるほか、BCPの意味合いも含めて、生産の在り方そのものの見直しを進める。また、研究開発費も、統合により被った部分などを中心に見直しを図ることで、売上比率に占める研究開発費の比率を16%まで下げることを目指す