花王は、同社ヒューマンヘルスケア研究センターと解析科学研究所が、歯の美しさに関わる"歯のツヤ"を低下させる原因の解明と、ツヤを引きだすための研究成果を発表した。同成果の一部は、第61回顕微鏡学会および第53回歯科基礎医学会で発表された。

実際の研究では、ツヤのある歯、ツヤのない歯を用いて、それらの表面の形態観察や構造の解析を行ない、ツヤを低下させている原因の解析を行ったほか、ツヤを引きだす技術についての検討を行った。

ヒトの歯を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡により観察したところ、ツヤのある歯の表面は平滑だったのに対し、ツヤのない歯は、数10nm~数μmの凹凸が存在していることが確認され、この凹凸が光の乱反射を発生させることで、歯のツヤが低下したものということが判明した。

沈着汚れの構造

具体的に、ツヤのない歯の凹凸部分の断面部の薄片サンプルを集束イオンビーム装置により作製、走査透過型電子顕微鏡で観察したところ、歯の表面に、無機物と有機物が混在した複雑な構造をしている沈着汚れが付着していることが判明した。つまり、これはツヤのない歯に存在した凹凸が沈着汚れの付着により生じたことを意味するほか、沈着汚れ中の無機物は、走査透過型電子顕微鏡、ならびに高分解能透過型電子顕微鏡観察による結晶構造解析により、エナメル質よりも結晶性が低いヒドロキシアパタイトと、非晶質のリン酸カルシウムであることが判明。有機物は、全反射赤外分光法でアミドの吸収が確認されたことから、タンパク質を含むと考えられた。

歯のツヤと表面形状観察

さらに、沈着汚れを電気泳動させてタンパク質の分離を行ない、唾液に含まれるタンパク質と比較したところ、沈着汚れの中には、唾液成分に含まれるタンパク質と同じ成分が存在することが確認されたという。

沈着汚れの解析

加えてて研究チームでは、ツヤのない歯に形成された沈着汚れは、ブラッシングだけでは除去しにくいことから、この解析結果をもとに、除去しやすくする成分について探索したところ、無機物と有機物から構成される沈着汚れの無機物部分にフィチン酸化合物、有機物部分にピロリン酸化合物がそれぞれ作用することを発見。フィチン酸化合物とピロリン酸化合物を含むハミガキを使用することで、沈着汚れが落ちやすくなり、歯のツヤを引きだすことができることを確認したという。

沈着汚れの除去検討

なお、同社ではこの成果をすでにオーラルケア商品として実用化するべく応用製品の開発を進めているとしている。