大日本スクリーン製造(DNS)と大阪大学(阪大)の研究グループは10月25日、太陽電池に極短時間のレーザー光を照射することで発生するテラヘルツ波の検出に成功し、従来は確認できなかった、1兆分の1秒の太陽電池の発電状態の可視化を実現したことを発表した。同技術の成果は、2011年11月24日(木)から大阪大学中之島センターで開催される「第1回 テラヘルツナノ科学国際シンポジウム(TeraNano 2011)」において、29日に発表される予定。

テラヘルツ波は、X線や可視光などの光と、無線やレーダーに代表される電波との境界の波長を持つ電磁波で、物質を透過しやすく、また相互作用によって物質を分析できるという特長を備えているが、半面、発生源や検出手法などに課題が多く、未開拓の電磁波領域といわれてきた。しかし、近年の研究の進展による開発が進み、現在では、空港のセキュリティチェックや非破壊検査など、さまざまな分野での応用が期待されるようになっている。

一方、太陽光発電は、クリーンかつ安全な自然エネルギーとして、活用に注目が集まっているが、幅広い普及を実現するためには、低コスト化と発電効率の向上が求められている。

こうした背景の中、研究グループでは、太陽電池におけるテラヘルツ波検出・分析技術に関する共同研究を進め、1兆分の1秒という太陽電池の瞬間的な発電状態の可視化に成功した。具体的には阪大が開発したレーザーテラヘルツ放射顕微鏡(LTEM)と、DNSが培ってきた計測・画像処理技術を活用し、太陽電池にレーザー光を極短い時間照射することで、発生したテラヘルツ波の状態を非接触で計測することを可能にした。これにより、太陽電池内部の発電の仕組みを詳しく解析できるようになるため、より発電効率に優れた太陽電池の開発や評価につながる可能性が出てきたと研究グループでは説明している。

太陽電池から発生するテラヘルツ波

なお、研究グループでは、今回の成果を踏まえ、今後もテラヘルツ波検出・分析技術の応用展開を推進し、太陽電池向けの新たな製造技術の確立を目指した研究を進めていく計画としている。