シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏

シスコシステムズは10月18日、60ワットの電源供給が可能なPoE(Power over Ethernet)機能「Cisco Universal Power Over Ethernet」(以下、UPOE)を発表した。同社のエンタープライズクラスのスイッチ「Cisco Catalyst 4500E」にて対応コンポーネントが提供される。

PoEは、イーサネットケーブルを通じてIT機器に電力を供給する技術。イーサネットケーブルのみの接続で済むため電源プラグが不要なうえ、ネットワーク経由での電源管理が可能で、使用されていない機器を把握してその部分の電力供給量を削減するといった細かな制御が実現できる。

今回発表されたUPOEの最大電力供給量60ワットは、現在標準仕様として広く普及しているPower over Ethernet Plusの30ワットの倍にあたる。これにより、ディスプレイとシンクライアント端末が一体化したゼロクライアント端末なども電源プラグなしで利用できるようになるという。すでに同社のパーソナルテレプレゼンス端末や、サムスン電子のゼロクライアント端末、DEPおよびシャルレライテックのLED照明などが対応端末として発表されている。

UPOE技術の特徴

シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏は、同技術を導入した場合の最大のメリットとして施設全体に及ぶ省エネ効果を挙げる。現在、オフィスに存在するPCなどの端末は、電力損失率十数パーセントという非効率な交流/直流変換アダプタを個別に使用しているが、「UPOEを導入することでCisco Catalyst 4500Eから直流電流を直接供給することが可能になる」という。Cisco Catalyst 4500Eは、ビル設備用の直流配電を直接受けられるほか、変換効率の高い交流/直流変換機を組み込んでいるため、現状のオフィス環境よりも電力使用量を抑えられる。

シスコシステムズでは、今回のUPOEに関して、「これまでのIEEE 802.3af、802.3atと同様、IEEEに対して標準化の提案を行っていく」としており、オープンな技術として普及を推進していく意向を示している。

サムスン電子のゼロクライアント端末「Sync Master NC220」。隣にあるCisco Catalyst 4503-Eとイーサネットケーブルで接続されており、そのケーブルから電力供給も受けている