レッドハットは10月5日、同社のクラウド技術に関する説明会を開催した。説明会では、米Red Hatのシニアディレクター ブライアン・チェ氏が登壇し、米国時間の4日に買収が発表された米Glusterの技術概要と、国内で新たに販売を始める「Red Hat Enterprise MRG」を紹介した。

買収を発表したGlusterの技術

チェ氏が最初に紹介したのが、数時間前に買収が発表されたばかりの米Glusterの技術である。Glusterは、IAサーバ群を分散型ストレージシステムとして動作させるようなオープンソースソフトウェア「GlusterFS」を提供する企業。「2005年に設立され、『ストレージ界のRed Hatになる』というビジョンを掲げている」(チェ氏)と言い、ワールドワイドで大規模なコミュニティを抱えている。

米Glusterのビジョン

米Red Hat シニアディレクターのブライアン・チェ氏

チェ氏は、GlusterFSの特徴として、「OSのファイルシステムを活用してストレージを構築するため、ドキュメントや画像、動画などの非構造データを扱える」、「Raidに似たアーキテクチャを採用しており、セントラルサーバが不要で自由にスケールアウトさせることができるうえ、データを複製して可用性が高められる」といった点を挙げた。

また、遠隔地にあるサーバを含めるかたちで分散型ストレージシステムを構築できるため、プライベートクラウドとパブリッククラウドをつなぐ共有ストレージとして活用することも可能。スケールアウトの方法に関しても「サーバを追加するだけ」(チェ氏)と言い、システムを停止させることなく簡単に拡張できる点がクラウド時代に適した技術であることを強調した。

チェ氏は、2020年までに非構造データが44倍に膨れ上がるといった調査結果なども引用しながら、Gluster買収が同社ソリューションの幅を飛躍的に広げることにつながると説明。さらに、顧客においては、50%にも上るコスト削減などが見込まれることなどを紹介した。

Red Hat Enterprise MRGの国内提供開始

レッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏

続いてチェ氏が紹介したのが、新たに国内提供を始める新ブランド「Red Hat Enterprise MRG」である。ブランド名のMRGは、Messaging、Realtime、Gridの頭文字をとったもの。その名のとおり、メッセージングシステム、リアルタイムOS、グリッドの3製品によって構成されている。

これらのうち、Messagingは、同社が主導して策定したメッセージングの標準規格「AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)」を実装したソフトウェア。仕様策定には、JPMorgan ChaseやGoldman Sachs、Credit Suisseなど、金融業界のユーザー企業も参加しており、金融システムで培われた高性能/高信頼の技術を取り込んだ製品になっている。

Red Hat Enterprise MRGのメッセージング製品の特徴

また、Realtimeは、Red Hatが開発をリードするReal Time Linuxを活用したディストリビューション。マイクロ秒単位の制度でレスポンス時間を補償する。トランザクション完了のタイミングが極めて重要な意味を持つ旅行予約/金融取引システムのほか、乗り物や軍事機器のシステムなどで採用されるケースが多いという。

Red Hat Enterprise MRGのリアルタイムOSの特徴

一方、Gridは、分散コンピューティン環境を構築するためのソフトウェアで、高いパフォーマンス/スループットを実現するジョブスケジューリング機能や管理ツールなどを提供している。世界最大規模のグリッドシステムなどに利用されている、ウィスコンシン大学マディソン校が主導して開発したCondorプロジェクトの成果物をベースにしており、信頼性も高いという。

Red Hat Enterprise MRGのグリッド製品の特徴

なお、Red Hat Enterprise MRGの各ソフトウェアは、サブスクリプション形式で販売される。価格は、個別見積りとなっている。