京都大学は、最近の太陽活動についての報告を行った。太陽は、2008年から2009年にかけて黒点が100年ぶりに少なくなるという異常極小期に入り、太陽光がわずかながら減少し、地球に氷期が訪れるという科学者もいるほどだった。

しかし、最近になり活動性が復活し、今サイクル(第24黒点周期)になって、大きなフレア(太陽面爆発)も出現するようになった。京都大学理学研究科附属天文台飛騨天文台・花山天文台では、太陽フレアのモニタ観測を行っており、日本時間の2011年8月9日、9月7日、同8日に発生した大フレアの観測にも成功している。このような短時間に大フレアを続けて観測することはまれだという。

なお太陽フレアは、その発生に伴って衝撃波や大量のプラズマが宇宙空間に放出される。それが磁気嵐となって地球磁気圏に作用して極地上空の大気に突入してオーロラを作ったり、軌道上の人工衛星を故障させたりする。そのため、地球周辺のプラズマや磁場の状況を「宇宙天気」として予報することが現代の文明社会を守るためには重要で、世界的にも宇宙天気研究が進められているという具合だ。大フレアの研究は、宇宙天気研究の観点からも重要とされている。

今回の8月9日の大フレアでは、発生に伴う衝撃波と、それに誘発された「フィラメント震動」と「プロミネンス震動」が世界で初めて同時に観測された。9月7日の大フレアの際にも、発生場所から離れたフィラメントが確認できただけでも7つが震動する様子が観測されている。フィラメント震動は噴出の原因となる可能性もあり、今後の詳細解析が待たれている状況だ。

また9月8日の大フレアの際には、飛騨天文台に名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)との共同研究で設置した新しい光学系での観測に成功。この装置は世界最高の時間分解能で観測でき、太陽フレアが非常に短時間に変動する様子もとらえることに成功している。

画像1。飛騨天文台で撮影された、8月9日17時台に発生した大フレアの部分画像。右上の明るい部分がフレアで、右下の沸き立つ炎のような明るい構造はプロミネンス。左下の暗い構造がフィラメントだ(同じ黒い構造でも黒点とは異なる)。フレア発生に伴って衝撃波が発生し、その衝撃波の電波によりフィラメント・プロミネンスが震動を開始した

画像2。9月7日7時台に発生した大フレアの太陽全面画像。画面中央やや明るい領域がフレア(右から3つ並んだ楕円の3つ目の左下の辺り)。周辺にある暗くて細長いフィラメントがフレアに伴い震動する。このフレアでは、7つのフィラメントが震動した。(飛騨天文台)

画像3。9月8日7時台に発生した大フレアの部分画像。画像中央下の黒点上部に見られる明るい領域がフレア。その右上にフィラメント噴出現象が起きている。(飛騨天文台/名古屋大学STE研)