テラと旭化成は9月30日、がん治療を目的とした細胞プロセッシング装置の共同研究開発に関する契約を締結したことを発表した。

テラは東京大学医科学研究所で開発された技術をもとに研究開発を進めている血液中に数少ない「樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔のような細胞)」を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製したがんの特徴を持つ物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にがんの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞のみを狙って攻撃させる新しいがん免疫療法「樹状細胞ワクチン療法」を中心とするがん治療技術・ノウハウを、国立医療機関や大学病院を含め、日本全国で18の医療機関に提供している企業。一方の旭化成は2011年度より開始した中期経営計画において、ヘルスケア事業領域の拡大を目指しており、世界の先端を行く「膜分離・吸着技術」による血液中の抗体や特異的細胞などの採取・濃縮・除去デバイス技術、高度管理医療機器の開発・製造技術、ウイルス除去膜プラノバ関連のバイオプロセス技術、生体適合性に優れた材料開発技術など、グループで培ってきた技術基盤の活用による「細胞・再生医療の実用化」に向けた製品システム開発を進めている。

今回の共同研究開発は、テラの保有する「樹状細胞ワクチン療法」などの免疫細胞の培養プロセスに、旭化成が医療事業で培ってきた知見、細胞プロセッシング技術を応用することで、細胞品質の向上や安定化、細胞培養の短時間化やコスト削減を目指すというもの。

現在の再生医療・細胞治療において行われる患者やドナーの細胞培養は、そのプロセスの大部分が培養技術者の手作業によって行われているため、培養した細胞の品質や作業効率は、培養技術者個々人の技術の熟練度に依存する部分が多く、高品質な細胞を、安定的かつ効率的に供給することが再生医療・細胞治療分野における課題の1つとなっているが、今回の共同研究が目指すがん治療目的の細胞プロセッシング装置が実用化されれば、がんの細胞治療の本格的な普及促進が期待できるようになるという。