Tizenのトップページ

Linux Foundationは9月27日(米国時間)、Linuxをベースにした新しいオープンソースOSプロジェクト「Tizen」の設立を発表した。対応デバイスとしてスマートフォン、タブレット、スマートTV、ネットブック、車載システムなどを想定しており、iOSやAndroidと並ぶモバイルOSプラットフォームの誕生となる。設立にあたってはLiMo Foundationが同プロジェクトに合流しているほか、実行アプリケーション環境としてHTML5ならびにWAC (Wholesale Applications Community)を想定しているという。また同日には、MeeGoプロジェクトから開発者をTizenへと誘導するという声明が出されており、事実上Linux周辺で外殻を固めていたAndroid以外のプロジェクトがすべて集合するものとなった。

スタートしたばかりのTizenページにアクセスすると、Welcomeメッセージとともに同プロジェクトについての簡単な説明が行われている。ターゲットについては前述のようなモバイルデバイスを中心としたもので、Tizenはそのアプリケーション実行環境としての役割を担うものになっている。HTML/CSSにJavaScriptを組み合わせたHTML5ベースのアプリケーションのほか、世界の通信キャリアらが中心となって策定を進めているWACを開発フレームワークとして想定しており、通信からマルチメディア、デバイス制御まで、Tizen APIを通じてアプリケーションから利用できるという。なお、OSプラットフォームとしてのTizenとそのSDKについては、2012年第1四半期でのリリースを予定している。またTizen搭載デバイスについては、2012年半ばでのリリースを見込んでいるという。

今回興味深いのは、AndroidやiOSデバイスが市場シェアを席巻するなか、なかなか行き場を見出せなかった業界団体主導によるプラットフォームの数々がTizenとして一同に集合したことにある。LiMoについては日本ではNEC (NEC Casio Mobile Communications)やPanasonicが積極的に参加して製品を出していたほか、Samsungが対応端末をリリースしていたことが知られている。また旧JILの流れを汲むWACでは多数の携帯キャリアが参加しており、AppleやGoogleといったベンダーに依存しないオープンなアプリケーション開発フレームワークを推進していたことが知られている。だがどちらも製品への実装面で課題を抱えており、特にスマートフォンにおけるシェアで2社に対抗できる布陣を敷けていたかどうかは難しいところだ。関係各社が力を集めることで、新たな展開を模索していこうというのがプロジェクト設立の理由の1つだとみられる。

一方で同日、MeeGoプロジェクトからは「What's Next for MeeGo」と題するエントリが発表され、過去1年半にわたってプロジェクトに協力してきた参加者への謝辞を表すとともに、今後MeeGo開発者らをスムーズにTizenへと移行させる手引きを数ヶ月かけて行っていくことが記されている。またここでは、アプリケーションの将来はHTML5にあり、今後の開発投資を同技術に集中させていくべきだとの見解が述べられている。直接は述べられてないものの、これはMeeGoの終了とTizenへの合流を宣言しているものとみられる。LiMoについても今後の説明が行われていないが、メンバーらはそのままTizenへと合流しており、Android以外のLinuxベースのモバイルOSプラットフォームがTizenへ集合した形となった。

なおTizenについては、Linux FoundationのTechnical Steering Groupがプロジェクトをホストしており、これに従来のプロジェクトのメンバーが参画する形態を採っている。このTSGはIntelとSamsungの混成チームとなっており、両社がプロジェクトの主要メンバーであることがわかる。IntelについてはMeeGoの主要ホストだということを考えれば当然の流れだが、興味深いのはSamsungのほうだ。同社はGoogleのMotorola Mobility買収に端を発し、特定ベンダー固有のプラットフォームに依存する体質に見直しを進めており、近年では同社自身の「Bada」をプッシュしていることが知られている。一方でwebOS買収の噂が出たことでもわかるように、引き続きプラットフォームの水平展開を模索しており、今回のTizenはその投資案件の1つになる可能性があると注目されている。