自然科学研究機構 生理学研究所(NIPS)の山中章弘准教授と常松友美研究員らの研究グループは、ハロロドプシンという光感受性センサを用いて、光スイッチをオンしたときに、マウスの脳(視床下部)のオレキシン神経の活動だけを抑えることに成功した。これにより、光のオン・オフにしたがってマウスの睡眠・覚醒を操作することに成功し、このマウスは光を当てたときだけ徐波睡眠(ノンレム睡眠)になった。同成果は、米国神経科学学会誌「The Journal of Neuroscience」で報告された。
これまでにも、オレキシン神経が脳の覚醒に関わっていることは知られていたが、覚醒に関わるオレキシン神経の活動だけを短時間でも抑えた場合、実際に睡眠を誘導することができるのか、またどのような睡眠なのか、その詳細は分かっていなかった。
今回、研究グループではオレンジ色の光を当てると神経の活動を抑えることができるハロロドプシンと呼ばれる光感受性センサ・たんぱく質を視床下部のオレキシン神経細胞にだけ遺伝子導入したマウスを作製した。
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光感受性センサ・ハロロドプシンの遺伝子導入でオレキシン神経の活動を光で操作。光感受性センサ・たんぱく質であるハロロドプシンは、オレンジ色の光を当てると塩素イオン(Cl-)を細胞の中に取り込み神経細胞の活動を抑えることができる。このハロロドプシンをオレキシン神経細胞にだけ遺伝子導入したマウスで、オレキシン神経の電気活動をオレンジ色の光を当てた時だけ抑えることに成功した |
このマウスを用いて光スイッチでオレキシン神経の活動を1分間抑制したところ、睡眠を人工的に誘導することに成功した。睡眠には夢をみるレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠があるが、今回の睡眠は特にこのうちノンレム睡眠だけを選択的に誘導していることが確認された。
オレキシン神経が長期的になくなることによって、ナルコレプシーという睡眠異常・脱力発作の病気になることが知られている。ナルコレプシーは、10~30代で、1000人に1人の割合で起こるとも言われており、今回のオレキシン神経を光スイッチで短時間(1分間)だけ抑制すると、ナルコレプシーと同様に、突然睡眠する症状が見られた。しかし、ナルコレプシーでは突然のレム睡眠や脱力発作が見られるものの、今回のようなオレキシン神経の活動を低下させただけでは、ノンレム睡眠を誘導することはできてもレム睡眠や突然の脱力発作を誘導することはできなかったことから、今後はこの違いを手掛かりにすることにより、オレキシン神経が長期的になくなった場合に起きるナルコレプシーの病態のメカニズムと神経回路の変化についての解明が進むことが期待できると研究グループでは説明している。
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