HTC Thunderbolt

調査会社の米IHS iSuppliは7月8日(現地時間)、米Verizon Wirelessが提供するLTE対応スマートフォン「HTC Thunderbolt」のBOM (Bill of Materials: 部品表)の分析結果を公表した。iSuppliによれば、Thunderboltは同社が過去解析したスマートフォンでも最も原価が高い製品で、そのBOMは262ドルに達するという。要因として4G LTE関連の部品だけで39.75ドルを占めており、CDMA版iPhone 4の171.35ドルと比較しても非常に高いことがわかる。こうした理由から、Appleが当面は自社製品でLTEを採用しない可能性が高いという予測ができるという。

iSuppliは過去にもiPhoneやiPadなど話題の新製品を分解してBOMによるコスト予測を何度も行っており、今回のHTC Thunderboltはその最新のレポートとなる。日本ではNTTドコモがすでにLTEベースの「Xi (クロッシィ)」サービスを開始している一方で、このサービスに対応したスマートフォンは今年後半まで登場しないとの予告が行われているように(NTTドコモはLTE機能はスマートフォンでのみ提供と現時点で説明している)、市場に出回っているLTE対応端末はほとんどない。現時点で同社からリリースされているのは今回のHTC Thunderboltのほか、Samsung Droid Charge、LG Revolution、そしてタブレットのSamsung Galaxy Tab 10.1のみだ。iSuppliによれば、QualcommのベースバンドチップなどLTE関連コンポーネントだけで39.75ドルと、BOM全体の262ドルに対して15%近くのコストを占めている。同社が以前公表したCDMA版iPhone 4 (Verizon Wireless版)のBOMが171.35ドルであることを考えれば、部品だけでおよそ1.5倍のコストがかかっているということになる。価格を引き上げる、あるいは利益率を下げるという形で対応することになるため、このあたりの判断は難しいところだ。ただAppleの場合、世代を追うごとにiPhoneの部品コストを1~2割程度下げているため、こうしたコストアップ要因があったうえで積極的に新技術を導入することは考えにくい。

iSuppliのシニアアナリストWayne Lam氏は「Appleは依然として9月発表のiPhoneで4G LTE対応を行う可能性がある」としながらも「4G LTEの第1世代のベースバンドチップはサイズが大きくなる」「LTEを導入した場合のiPhoneは、現行のiPhone 4の世代よりも確実に原価が高くなる」との2つの要因を挙げ、これがAppleがiPhoneにLTE導入をためらう原因になるとの予測を行っている。ただWall Street Journalなどが報じた情報にあるように、9月リリース予定のiPhoneでは従来製品よりも若干の薄くなった筐体を採用する可能性が高いことから、少なくともこの世代のiPhoneでLTEを採用する可能性は低いといえるだろう。

iSuppliでは今年4月に行われたAppleの決算報告会での同社COO Peter Oppenheimer氏の「第1世代のLTEチップセットはデザイン上の妥協を余儀なくさせるものであり、それはわれわれの望むものではない」という発言を引用し、少なくとも第1世代のLTEチップセットの導入の可能性はないとの認識を示している。同社によれば、Qualcommの第2世代のLTEチップセットの提供開始時期は2012年初頭であり、順当にいけば2012年第2四半期にもAppleの望むような形でのLTEチップセットを搭載したiPhoneの出荷が可能になると予測している。