凸版印刷は、理化学研究所(理研)ゲノム医科学研究センター、理研ジェネシスとの共同研究により、全自動小型遺伝子型解析システムを開発し、シカゴ大学との共同研究として、この全自動小型遺伝子型解析システムを用いて、約140例の大腸がん患者から採取したがん組織内の遺伝子変異の解析を試みた結果、大腸がんの遺伝子変異を全自動で一時間以内に高感度かつ高精度に検出できることを確認したことを発表した。

患者が生まれつき持つ遺伝的背景を考慮し、科学的根拠に基づいて各個人に効果的な治療・投薬方法を提供する「オーダーメイド医療」によって、患者個人の「QOL(生活の質)」が向上するとともに薬剤副作用から派生する医療費の軽減が見込まれ、医療費抑制の期待が高まっている。しかし、オーダーメイド医療を実現するには、病院においてその場で薬剤の効果、副作用に関する遺伝子型の違い(一塩基多型:SNP)を判定する必要があり、このニーズに応えるため、凸版は理研らと共同でインベーダープラス法を採用した全自動小型遺伝子型解析システムを開発し、血液を入れてから全自動で1時間以内にSNPを判定することを実現した。

一方、先天的な遺伝子多型による個人差だけではなく、がんにおいては後天的な遺伝子変異により、薬の効き方に個人差が現れることが判ってきており、各個人の薬の効き方を予測する手段として遺伝子解析が注目を集めてきている。現在、さまざまな臓器のがんについて、遺伝子変異と薬剤の効き目の関連を解明する研究が進行しており、こうしたオーダーメイド医療を実現する1つの方法として、抗がん剤の1つである分子標的治療薬に対する遺伝子検査が注目を集めている。

分子標的治療薬は、副作用を最小限に抑えられる効果的な治療方法だが、同じ臓器のがんであっても、がん組織内の遺伝子変異の違いによって効果が異なることが明らかになってきた。そのため、患者のがん組織を採取し、がんの遺伝子変異を遺伝子検査で検出した上で、有効性の高い分子標的治療薬を選択することが必要となっているが、がん組織の遺伝子検査は、正常な細胞も含んだ検体から、がん細胞の遺伝子変異のみを検出する必要があるものの、既存の解析技術では検出できない場合もあり、感度が十分ではなかったほか、DNA抽出や遺伝子解析の手順が複雑で、臨床現場への普及の障壁となっていた。

こうした課題を解決するため、凸版らは共同開発してきた全自動小型遺伝子型解析システムを応用し、がん細胞の遺伝子変異を全自動で検出することを、シカゴ大学との共同研究において実施。現在は、種々のがん組織(パラフィン包埋組織および凍結組織)を用いて、がん組織内の遺伝子変異を検出する実証研究を行い、一般的な検査方法であるダイレクトシークエンス法との比較試験を実施し、約160サンプルにおける遺伝子変異を全て検出することに成功したという。

なお、凸版および理研ジェネシスは、この全自動小型遺伝子型解析システムを研究用用途向けに2011年度中に販売開始する予定としているほか、理研ジェネシスは、同システムをベースとした診断用システムを薬事申請する予定だという。