アプリ内課金に関してiOSアプリ開発者の特許侵害を主張しているLodsysが5月31日(米国時間)に、一部のiOS開発者を訴えたことを明らかにした。AppleがiOSアプリ開発者の支援に乗り出してきたため、当初の計画よりも早く訴訟に踏み切ったと説明している。米国での報道によると、訴えられたのはCombay、IconFactory、Illusion Labs、Shovelmate (Michael G. Karr )、QuickOffice、Richard Shinerman、Wulven Game Studiosなど。

特許ライセンス会社であるLodsysは、同社が保有するアプリ内課金に関する4件の特許を複数のiOSアプリが侵害しているとして、5月中旬に当該のアプリの開発者に特許使用料の支払いを求めた。特許侵害が指摘されたiOSアプリ開発者はいずれもLodsysと特許契約を結んでいないが、Appleが提供するiOS SDKのAPIを用いてアプリ内課金を実現しており、AppleはLodsysから4件の特許をライセンスしていた。そのため5月22日にAppleの法務担当シニアバイスプレジデントであるBruce Sewell氏が、同社とLodsysのライセンス契約がiOS SDKを用いて開発されたサードパーティのiOSアプリにも適用されるという内容の書簡をLodsysに送付したのが、これまでの経緯だ。

Lodsysは、同社がアプリ開発者に特許使用料支払いを求めていることについて、モバイルプラットフォーム上のサードパーティのモバイルアプリをホテルに喩えて説明している。「宿泊料に見合うサービスに責任を持つのはホテルのオーナーであり、ホテルが借りている土地の所有者や予約を代行した旅行会社ではない。あるいはホテルの建築に用いられた柱や釘などの材料の提供者、ハンマーなどのツールの製造業者でもない」と指摘。「Lodsysの特許ポートフォリオは総体的なソリューションの一部として用いられており、われわれは(ソリューションに) 責任を持つグループからの特許支払いを求めている」としている。

Appleの見解では、"ソリューションに責任を持つグループ"はプラットフォーム提供者だ。しかし、Lodsysは複数の法律専門家に相談した結果、「(アプリ内課金を実装している)アプリ開発者に、それぞれのアプリケーションの権利を確保する責任がある」という結論に達し、訴訟に踏み切った。Appleとの見解の相違については、裁判においてLodsysの言い分が認められなければ、同社が特許侵害を通知したアプリ開発者に対して1000ドルずつを支払うと宣言するなど、非常に強気だ。

現時点でLodsysは著名なiOSアプリ開発者のみをターゲットにしているが、同社の言い分が認められれば、ライセンス使用料支払いをiOSアプリ開発者全体に広げるだろう。またiOSアプリに続いてAndroidアプリもターゲットにしており、今後の行方によってはモバイルアプリ市場全体に騒動が広がる可能性もある。