モバイルペイメントの分野はいまIT業界でも最もホットなトピックの1つだが、ここにまた1つの彗星が出現した。Squareというスタートアップ企業が提供するソリューションでは、マイク状の小型装置を付けることで手持ちのiPhoneやiPad、Androidデバイスをクレジットカードリーダーへと変貌させることができる。さらに同社が5月23日(現地時間)に発表した新サービス「Card Case」では、こうしたクレジットカード提示や読み込みなしに自動で支払いが完了する仕組みを提供する。

Squareが提供する小型ドングルのカード決済ソリューション

iPhoneやiPadにクレジットカードリーダー装置を取り付け、いわゆる簡易POS (Point of Sales)端末にする仕組み自体はそれほど珍しいものではない。過去にも紹介したようにMorphieのケース型カードリーダーが販売されているほか、米国のApple Online Storeでは各店員が持っているiPhoneすべてにクレジットカードリーダー装置が取り付けられており、店内の誰に相談してもレジに並ばずにすぐに決済が可能という、非常に画期的な仕組みが導入されている。Squareもこうしたスマートフォンをカードリーダー化するドングル状の装置を販売しているが(社名の「Square」はこの装置が真四角の形をしていることからとられている)、他社に比べて特徴的なのは、装置のモバイルデバイスへの接続部分がマイク端子になっており、非常にシンプルで小型なことだ。このソリューションを導入する企業は、各決済トランザクションに一定額手数料を支払うだけという簡易的なものになっている。

今回iOSのSquareアプリに導入された「Card Case」機能。「Tab」を使ってバックエンドで利用者のカード情報や個人情報をやり取りし、実際の買い物のタイミングでは支払い手続き等の煩雑な作業を割愛させる

そして今回注目したいのはSquareが発表した「Card Case」だ。これは同社がモバイルデバイス(この場合はiOS等)向けに配布している「Square」アプリの機能の一部で、クレジットカードの読み込みよりもさらに簡単な決済手段を提供する。ユーザーがアプリを起動してこの機能を有効にすると、Card Caseに参加している近くの商店やレストランの一覧が表示され、そのメニュー内容や当日のお勧めといった情報を入手できる。ユーザーがもしその店舗を気に入って買い物をしたい場合、その店舗に行って「Tab」を有効にすればいい。すると、ユーザーは注文をするだけであとは自動的に決算が完了し(クレジットカードや身分証の提示も必要ない)、SMSまたはメールで電子レシートが送られてくるという寸法だ。

そのからくりは、事前にユーザーが登録した情報にある。Card Caseに登録しているユーザーの情報は、ユーザーがTabをオンにしたことでバックエンドで店舗へと伝えられており、店員はそこで表示される顔写真などの情報を基に注文を受け、ユーザーとの金銭やカードのやり取りを経ずに決済をバックエンドで済ませる。この仕組みを実現するために、参加店舗はSquare Registerと呼ばれる決済システムをiPadに導入し、iPadを簡易POSレジとして機能させている。このiPadにSquareドングルを装着しておけば、Tabを利用しないユーザーがクレジットカードやデビットカードを提示した際にも決済が行える。あとは現金のやり取りさえクリアできれば、従来のレジシステムはすべてiPad等のデバイスで置き換えられるだろう。

まだ参加店舗は全米40程度と少ないのが難点だが、仕組みがシンプルなので都市部の個人経営の店などが気軽に導入するのに向いており、今後導入例が増えるかもしれない。対応店舗や実演ビデオは同社Card Caseのページを参照してほしい。

ちなみにこのSquare創業者兼CEOはJack Dorsey氏、つまりTwitterの3人の創業者の1人で、元CEOにあたる人物だ。Twitter CEO退任後も、同氏は出戻りの形で同社会長に復帰している。より簡易でストレスない支払いシステムが必要との考えで新たにスタートしたのがSquareということになる。もっとも、これがモバイルペイメントで必要なすべての要件を満たしているわけではなく、日本でいうFelicaや今後世界で普及が進むとみられるNFCの市場を侵食することにはならないだろう。だがコンシューマとリテーラーの両者にとってメリットとなる簡単な決済システムは、従来の銀行やクレジットカード会社主導の仕組みからはなかなか生まれないとみられ、その意味でニッチなニーズをうまく満たすソリューションとして活用が広まるのではないだろうか。